日本の漁業が1970年代前半から80年代後半にかけて約20年もの間、世界一の漁獲量を誇っていたことをどれだけの方がご存知でしょうか? わが国は、戦後の食糧不足を補うべく、世界の海へ魚を求めて、漁場や魚種を開拓し食糧供給に多大な貢献をしてきました。そこで日本をはじめとする遠洋漁業国の影響を恐れて、1977年に設定されたのが、200海里漁業専管水域でした。
そして時は流れました。世界全体の生産量(漁業と養殖業の合計)は増え続けていますが、対照的に日本の減少が止まりません。
サンマ、スルメイカ、サケをはじめ数年前までは、一尾、一パイ、一切れ100円で販売されていた水産物の価格が、漁獲量の極端な減少で、2~3倍になっているケースが少なくありません。魚が減ると、鮮魚としてだけでなく、缶詰や冷凍食品など加工品の値上げにも波及して、家計を苦しめます。
魚が減るということは、単に第1次産業としての漁業が衰退するということに留まりません。水産加工業、物流業、金融業など、他産業も巻き込んで地方を衰退させてしまうのです。
2022年の数量は386万トンと、1956年以降現在のやり方で統計を取り始めてから過去最低数量を更新しています。多くの人が知らないところで、世界全体では増え続けているのに、さまざまな魚種で「過去最低」「こんなことは今までなかった」という、魚が獲れない声が全国で広がっています。
夏休みに子どもと考えたい、なぜ魚が減っているのか?
「なぜこんなことになってしまったのか?」。筆者は、それを皆さんに夏休みの自由研究で是非調べて欲しいと思います。
今から、16年ほど前のことです。当時中学1年生だった長男が夏休みの自由研究で、「危機に直面している日本のサバ資源」というタイトルでコンクールに出して、注目を浴びたことがあります。
先入観がない目で、ノルウェーと日本のサバ漁業の違いと、日本の乱獲を指摘した内容は、学校の先生たちや教育関係者に衝撃を与えました。それまで日本のサバの水揚げが増えたら、輸入しているノルウェー相場が下がって困ると考えていた筆者の考え方も変えました。
さらに筆者を通じて、政治家にも影響を与え、法律を変えるきっかけの一つにもなっていきました。しかしながら、改革はまだ始まったばかりです。
正しい情報がなかったために資源管理に関して偏見を持っている人は数多くいます。世論を変えていくべく、なぜ魚が減っているのか? なぜ魚が獲れるのに禁漁するのか? について世界と比較します。