2024年7月16日(火)

Wedge REPORT

2023年8月30日

 学校は児童生徒への教育を施すことを目的としている。したがって何より重要なことは児童生徒への対応である。ご冥福を祈るとともに、二度と同様の事故を起こさないための対策やショックを受けた児童の心のケアなどが何よりも大切だ。

 また、小学校の発達段階を踏まえて保護者及び地域住民その他の関係者の理解を深め、連携して教育活動を推進するためには情報を積極的に提供することは重要であり、緊急の保護者説明会も当然開催するべきであると考えられる。

 しかし、報道向けの会見はどうか。

 あくまでもネット上の情報による推測になるが、今回は学校としても夏休みの注意事項として危険な箇所に近寄らないように指導していたと報道もされており、学校における事故ではなく、必ずしも報道関係向けの会見の必要はないと考える。

 あえて言うなら地域住民の理解を深め、連携するための情報提供として行うことは考えられなくもないが、むしろ会見を開くべきなのは河川事務所なのではないか。

 想像するに、まず夏休み初日に起こった非常に痛ましい事故自体がメディアの興味を引き、そのため多くの取材が学校に殺到し、本来学校が対処すべきことに対処しきれなくなる可能性が高かったことが考えられる。そのために、会見を開いて情報を与えた方が遺族や学校が落ち着いてこの問題に向き合う時間を作れると判断したと思われる。

 もしそうであるならば、教育委員会が市役所などを会場に会見を開き、どうしても必要があれば校長は一緒に同席するスタイルをとるのが本来だと思われる。報道によれば会場は学校であったことは分かるが教育委員会が同席していたのかは分からなかった。

 校長をつるし上げているように感じたというコメントもあるように、動画ニュースでは校長だけが映し出されていた。また、当初は地名までしか公表されていなかったのか、「どこの学校だ?」という言葉もSNSでは広がっていたようである。

学校への過度な要求が現場を疲弊させる

 さまざまなメディアで学校のブラック化が叫ばれて久しい。筆者は管理職を12年間務めたが、その間に心因性で療養休暇や休職または退職した職員は両手でも足りない。その上教員志望者の減少が続き現在では全国的に学校の教員が定数に満たないことは今や隠せない状況になった。

 働き方改革の波の中で学校の働き方の実態が明らかになり、教員離れに拍車をかけたのである。この状況はさらにブラックを招くという悪循環が生まれている。

 教育委員会はハローワークに募集をかけ、ある学校では全保護者向けに教員の募集案内を配っているという話まで聞いた。筆者の住む茨城県では教員採用試験を受けられる年齢がいつの間にか59歳にまで引き上げられた。

 実はこうしたことは学校が報道向けの会見を開いたことと無関係ではない。


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