米国とイランはこのほど、拘束していた囚人5人ずつを釈放、交換した。米国はこれに伴い、韓国で凍結されていたイラン資産約60億ドル(8860億円)を解除した。
米国の野党共和党は強く反発、バイデン政権は釈明に追われている。背景にはトランプ前大統領の復活を恐れるイランが「最後のチャンス」として歩み寄り、米側にはイランとの「裏取引」を維持したいとの思惑があったようだ。
オマーンとカタールで間接交渉
囚人交換は約2年間の交渉が実ったものだが、ペルシャ湾の小国であるオマーンとカタールが仲介役を果たした。米紙などによると、交渉が進展を始めたのは今年5月、ホワイトハウスのマクガーク中東問題調整官がオマーン入りし、イラン側と間接交渉してからだ。イランは核問題のカニ首席交渉官が対応した。
オマーン当局者が米、イラン交渉団の間を行き来し、それぞれの主張を相手側に伝えて調停。スイス・ジュネーブでのイラン核合意再建交渉の間接協議を踏襲した形だ。
イラン側に拘束されていたのはイラン系米国人らで、最長8年近くも悪名高きテヘランのエビン刑務所にスパイ容疑などで拘留されていた。交渉がほぼ妥結した8月になって5人は刑務所から出され、軟禁生活が許されていた。
米国は今回、交渉をまとめるに当たり、対イラン制裁違反で韓国に凍結されていた石油取引の支払い代金約60億ドルを条件付きで解除することに踏み切った。条件とはイランによる資金の使い道を食料、医薬品、人道物資の購入に限定したことだ。
既に資金は韓国からカタール・ドーハの銀行に送金された。今後米国とカタールが使い道を厳しく監視するという。
イランのライシ大統領は「資金はイラン国民のものであり、国民の必要に応じて使う」と述べたものの、合意の条件を反故にする姿勢は見せていない。米国の野党共和党は「米国人の人質になるリスクが増大した」などと強く反発している。バイデン政権は「凍結を解除する以外、米国人を救う手立てはなかった」と防戦に追われ、イランが合意を破れば資金の「再凍結」も可能だと弁明している。