2024年7月16日(火)

教養としての中東情勢

2023年9月22日

 実際に「裏取引」が存在するのかは確定的ではない。米国務省のミラー報道官は「核問題に関する〝うわさ〟は虚偽かミスリード」と述べたが、全面否定はしなかった。

 総合的にみて、両国の間で何らかの秘密協議が行われ、その一環が囚人交換という形で表れたのは間違いないところだろう。イランの最高指導者ハメネイ師が「イランの核インフラが守られるなら、西側との合意を認める」と微妙な言い回しをしているのも示唆的だ。

イランの核爆弾製造は止められるのか

 IAEAによると、イランは8月19日時点で、60%に濃縮した六フッ化ウランを推定121.6キログラム貯蔵している。60%の濃度は核爆弾に使われる90%濃度のウランを容易に製造できるレベルといわれている。

 だが、このところのイランの60%濃縮ウランの製造量は明らかにペースダウンしている。また、最近ではシリアやイラクでの米コントラクターを狙った攻撃も起きておらず、どちらも「裏取引」が関係している可能性がある。

 しかし、仮に「裏取引」があったとしても、革命防衛隊などのイラン強硬派が了承しているとは限らない。イラン内部は一枚岩ではない。

 現にIAEAが9月16日に発表したところによると、イランから核査察官の一部を拒否すると通告があった。査察官の中核グループの3分の1が排除されることになるとされる。

 イランが核爆弾を製造するには「数カ月かかる」(ミリー米統合参謀本部議長)という見立てが有力だが、イランは米爆撃機の地中貫通弾の攻撃を受けないよう地下深くに新たな核施設を建設中で、バイデン政権の今回の融和策が取り返しのつかない結果になるという声も聞こえてくる。

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