2024年5月14日(火)

古希バックパッカー海外放浪記

2023年10月15日

仕事に追われ報道内容を咀嚼する暇がない、他方で反対運動の同調圧力

 7月16日。Korail(韓国鉄道公社)に勤務する20代後半のエリート女性。福島処理水については漠然と不安を感じているが科学的根拠については知らないと。日々多忙でニュースも聞き流す程度なのでじっくり考えたことがないと。

7月22日。全州の工芸品展示センターに勤務する女性は福島汚染水放出が命に係わる深刻な問題と懸念を表明。他方でやはり忙しくて科学的根拠は分からないと。しかし韓国国民が大反対しているから自分も反対であるとして話を打ち切った。人目を気にしておりそれ以上話したくない様子。

 彼女の雰囲気からは福島処理水が安全と公言できない韓国社会の同調圧力を感じた。4年前に半導体製造材料の日本の対韓輸出規制に反発して韓国社会で日本製品不買運動が展開された。当時は周囲の目を気にして日本のビールが飲めないとか、日本への旅行をキャンセルしたとか強烈な同調圧力が社会全体を席捲していたが、福島処理水問題でも同様なのだ。

全羅北道の地方都市の益山駅前広場の慰安婦少女像。例の疑惑が取り沙汰されている元慰安婦支援団体が呼びかけ、各地の地元市民有志の寄付により同様の慰安婦像が津々浦々に建てられている

知日派知識人が指摘する“反日が絶対正義”という国民感情

 7月27日。南原で早稲田大学に留学した論客のK氏と遭遇。K氏によると韓国人は李承晩以来政治家に騙され続けてきたので政府・政権の言葉を信用しない。

 そして植民地時代から現在に至るまで“国家としての日本及び日本政府”は韓国民にとり常に否定するべき絶対悪との説明。日本人や日本文化は大好きという韓国人も日本国家・日本政府に抱く感情は憎悪と不信という。7月18日に論山市で出会った高校の日本語教師の40代後半の韓国女性も全く同様の反日正義の国民感情の根深さを語っていたことを思い出した。

 K氏は日本政府を支持することは“親日派”チンイルパとして韓国では唾棄すべき軽蔑の対象になるという。ハングルで“親日派”は日本の植民地支配に協力した売国奴を意味する。“親日派”は中国における対日協力者の“漢奸”、フランスのナチス協力者の“コラボラトゥール”と同義語なのだ。

 現在でも政治家や著名人が日本政府の政策を支持すれば親日派(=売国奴)という忌まわしいレッテルを貼られ政治生命や社会的名声を失う。韓国の原子力の専門家や科学者が福島処理水について沈黙を守っているのも福島処理水について科学者としての良心から安全性を公言すれば韓国社会から親日派のレッテルを貼られ嵐のようなバッシングを被るからという。

 そして慰安婦問題・徴用工問題・福島汚染水問題はすべて同一線上にあると断言。とにかく日本政府がやることを全て疑い否定するのが“韓国人の正義”という。

なぜ尹大統領は国民の支持を得られないのか

 K氏によると徴用工問題で譲歩して福島汚染水放出を容認した尹大統領の政治決断は韓国民の正義感を踏み躙ったものであり国辱であるとフツウの韓国人は激怒している。他方で韓国人は日本政府や日本人が尹大統領を高く評価していることを良く知っている。

 尹大統領の支持率が30%前後(他方で不支持率50%超)と低迷しているのは当然とのK氏の解説。K氏は「韓国民のこうした非合理的な正義感を理解しないと福島処理水問題への韓国民の反応を日本政府及び日本人は正しく認識できないだろう」と結んだ。

アメリカ人英語教師カップルの見た韓国人の福島原発処理水ラプソディー

 7月30日。光州市内の公園で米国人カップルと歓談。彼らは光州市郊外の小学校分校で英語の補助教員をしている。来韓1年半。韓国は同調圧力が強い不思議な社会だと感想を漏らした。例えば小学校では服装は自由なのに大半の生徒が黒のTシャツを着て登校するとか。また韓国の若い女性は同じような化粧をしているので見分けがつかないとか。

 福島処理水に対する余りにも感情的(too much emotional)でヒステリックな反対運動は理解不能でとても先進国とは思えないと語った。デマやプロパガンダに容易に流される国民性は非常に危険(dangerous)と眉をひそめた。

反日正義ジジイの福島汚染水反対と対馬の歴史的領有権

 7月28日。全羅北道のコチジャンの名産地である淳昌の東屋で5~6人の地元中高年男女に囲まれて雑談しながら夕涼みをしていた。

 そのうち75歳の地元の男性が福島処理水絶対反対と言い出した。話しながら次第に興奮して日本は慰安婦問題、徴用工問題で謝罪も賠償もせずに今度は福島汚染水で問題を引き起こしていると口角泡を飛ばして激高。独島ドクト(竹島)だけでなく対馬テマドも歴史的に韓国の領土だと繰り返した。激昂してまくし立てるハングルは殆ど聞き取れないが固有名詞を何度も繰り返すので彼の主張は理解できた。

 他の地元民は反日ジジイの発言を黙って聞いていたが、雰囲気から反日ジジイの怒声・罵声に心中喝采している様子が窺えた。反日正義の厚い壁を肌身に実感した夕べであった。


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