2024年12月22日(日)

古希バックパッカー海外放浪記

2023年7月16日

『2023.2.4~4.28 83日間 総費用75万円(航空券24万円含む)』

日本人年金生活者が海外で必ず聞かれる2つのテーマ

 過去10年間の海外放浪で外国人、特に欧米系の多少は意識の高い人達から頻繁に聞かれたのが年金と原発という二つのテーマだ。海外で初対面の人間同士の挨拶では最初に出身国、居住都市、職業(学生なら専攻分野)を数分以内に相互確認するのがフツウである。逆に相互確認ができないような素性の知れない相手とは関わらないのが無難である。

 日本人と分かると頻繁に聞かれるのがフクシマの安全性という原発問題。そして無職の年金生活者(pensioner)と分かると「日本は金持ち国家だから自由に海外旅行できる高額の年金をもらえて羨ましい」というステレオタイプな反応だ。

ワイマカリリ川の河口。早朝はサーモン狙いの釣り人が並ぶ

NZで聞く年金問題

 欧米では中高年ばかりでなく若者も働き盛りも年金に非常に強い関心を持っている。筆者の知る限り欧米人にとり退職後は“年金で豊かな第二の人生を楽しむ”というのが仕事を継続する唯一無二の動機に思える。

 筆者がNZ旅行した今年2月から4月にかけての時期はフランスの年金制度改革法案(現在62歳の年金支給開始年齢を64歳に引き上げる法案)への労働者の大規模なストライキやデモでフランス中が騒然としていた。そうした背景もあり否が応でも年金について議論することになった。

 3月9日。南島南東の田舎町クリントンでK氏という48歳の救命救急士のお宅に泊めてもらった。

 日本人が70歳になっても半数近く(47%という調査結果がある)が、パートなり非常勤なり何らかの仕事を継続していることに対してK氏は「あり得ない。それはなんらかの政治的意図にもとづき操作された数字だろう」と一蹴した。筆者が自身の周囲の友人・知人の半数が仕事を続けていると具体例を挙げて説明してK氏もやっと理解した次第。

 日本では月額5~6万円の年金で暮らしている老人が少なからずいること、長年サラリーマンとして定年まで働いても上位レベルですら月額18万円程度にしかならないことを説明したところ「わずかな年金しかもらえず死ぬまで働くなんて日本人はミゼラブルすぎる」と天を仰いだ。

 NZでも65歳から年金支給開始なので人々は遅くとも65歳で退職して“人生を楽しむ”ことが当然のようだ。K氏は救命救急士という職業柄早期退職してもほぼ満額の年金を受給できるので60歳での早期退職を検討していた。

フランスの年金生活者から聞く年金問題と権利意識

夕焼けのカイラキ・ビーチ・キャラバン・キャンプ

 3月25日。カイラキ・ビーチのキャラバン・キャンプ。キッチンで夕食を作っていたらフランスのツールからきた夫婦と一緒になった。旦那は70歳で同年輩。

 マクロン大統領の年金改革法案について聞くと旦那さんは「労働者が激怒するのは当然だ」とにべもない。当人は「当時の規定に基づき60歳で年金生活を始めたが当然の権利だ」と不機嫌そうに答える。彼にすれば労働者の権利を踏みにじる法案について日本人の門外漢が法案の是非を質問すること自体が“論外”と言わんばかりに気色ばんでいる。

 「日本では年金支給額が少ないので大半の人間は年金支給開始年齢を超えても仕事をしている。財政上の問題から現在65歳の支給開始年齢を早晩68歳に引き上げることになるが“年金制度を維持するためには仕方ない”と国民も諦めている。フランスでも年金制度維持のためには改革法案はやむを得ないのではないか」と筆者が尋ねたところ、「仕事中毒者(workaholic)の日本人のことはフランス人には全く理解できない。フランス人には人間らしい生き方をする権利がある」と言下に否定して話を打ち切った。


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