フランスの若者の年金への期待感
4月2日。ホエール・ウオッチングで有名なカイコゥラのキャンプ場。フランス人の30歳前後のカップルと談笑。男子によるとフランスでは年金は満額ベースで退職前の10年間の平均賃金の概ね70%が支給されるという。
それほど高水準ならば豊かな年金生活を楽しめるし、日本のように高齢になってまで働く必要はないはずだ。二人はフランスで勃発している年金制度を巡る労働者の過激な行動に対しても一定の理解を示していた。
彼らは30年以上も先のことだから年金制度がどうなっているか分からないと言いながらも将来の年金生活を夢見ているようだった。日本の同年代の若者と比較して遥かに楽観的に思えた。
年金改革法案を巡る混乱はフランス革命以来の悪しき政治遺産?
4月10日。南島北端の町ピクトンのキャンプ場。終日雨。ダイニング・キッチンで濡れた寝袋、テントシートなどを乾かしながらユーチューブで暇潰し。コルシカ島出身のフランス女子がお茶を淹れにきた。コルシカ島といえばナポレオンの故郷だ。彼女はフランスの大学で学んだあと東大大学院でコンピューターサイエンスを修めたという才媛。その後ファイナンスを学びロンドンのシティーの金融機関でフィンテックを6年実践。現在はフランスのIT企業勤務。
才女は年金制度改革法案でフランスが混乱しているのはフランスの恥であると大衆運動を批判。無秩序なデモやストライキで経済活動を停滞させている連中は手厚い失業給付金や低所得者への生活補助金で甘やかされている。まともに仕事をせずとも暮らしていける生活を当然の権利と考えている怠け者の集団であると一刀両断。
今回のように暴力行為で国家の重要政策が頓挫するのは社会正義(social justice)ではないと舌鋒鋭く批判。
彼女によると、そもそもフランスは戦前の人民戦線内閣以来左派が常に一定の影響力を維持しており、特にミッテラン政権下で労働者の権利が拡大された。そしてフランス革命の遺産として大衆運動で政治を動かすことを許容する政治風土があると指摘。
民主的選挙で選ばれた大統領や国会を無視して大衆運動で政治を動かすことは本来の“民主主義”なのかというのが彼女の根源的な問題提起であった。