2024年4月20日(土)

古希バックパッカー海外放浪記

2023年2月19日

『バリ島で島流し 2022.10.17~12.15 59日間 総費用22万7000円』
バリ島西端のダイバーの聖地アメドの中学校の下校風景。鈴なりの生徒を満載したトラックが続々と通る。トラックを雇う余裕のない山間部の村では中学生は無免許でバイク通学しているという

 日本語学校の経営者A氏に話を聞いた。生徒数は約20人。午前、午後、夕方の3部制で授業をしており生徒の都合にあわせて通学できる。教室では5人の若い女性が日本語の教科書で勉強していた。また個室では青年がオンラインで日本の講師と日本語会話をしていた。

 A氏によると、彼の日本語学校では主に介護職の特定技能として日本での就労ビザを取得するために日本語能力試験でN4レベル(JFT Basic A2)を合格させることが第一の目的とのこと。試験では①言語知識(文字・語彙・文法)、②読解、③聴解(ヒアリング)が出題されマークシート方式で回答する。従って書くこと、話すことの能力は問われない。半年の学習で大半の生徒はN4レベルを合格するという。

採用面接では“動機”“やる気”“元気”が合格の決め手

 A氏はN4の合格は通過点であり彼の学校の最終目標はテレビ会議方式での日本側事業者との採用面接試験に合格することだと強調した。A氏は生徒の採用面接に同席している。A氏によると日本の受け入れ側(雇用者)が重視するのは“動機”“やる気”“元気”という“三気”であるという。

 雇用者は日本語が多少拙劣でも“三気”があれば即決採用するようだ。雇用者は外国人が日本での職場体験を通じて日本語が瞬く間に上達することを熟知しており、むしろ人柄を重視するらしい。

 A氏は優秀な生徒に限って「お金を稼いで家を建てて親孝行することです」などと真面目な本音を話してしまうという。面接前に「日本で先進的な介護を学んで帰国後の自分のキャリアに役立てたい」とか雇用者側が期待するような回答をするように指導しているとのこと。

とにかく何がなんでも3年我慢しろ

 A氏は就労先が決まり日本に渡航する特定技能の生徒に対して「3年間は死んだつもりで我慢しろ」と諭すという。3年我慢すれば最長5年まで日本滞在を延長することが可能となることを理解させるのだ。

 そして制度上は基本3年以上経過し、指定された介護試験(実務者研修)に合格すれば介護福祉士国家試験の受験が可能となる。この難関の日本語の介護福祉士国家試験に合格すれば日本で永続的に就労が可能となる。そして家族を呼び寄せて暮らすことが可能になる。A氏は「介護福祉士国家試験の日本語が難解すぎて実際上は門戸が閉ざされている。この日本語のバリアを下げなければ不合格となり5年で帰国しなければならない。遠からず日本での介護職を目指すインドネシア人はいなくなる」と日本政府の検討を求めた。

 なお、上記の介護試験(実務者研修)の成績が良ければ、勤務先の企業次第で就労期間が延長され特定技能2期生に進むことが可能となるという。

インドネシア人にとり日本での就労のメリット・デメリット

 A氏によると介護分野は先進国ではどこも人手不足。賃金が高い米国・カナダ・オーストラリアは英語能力が求められる。英会話が達者なフィリピン人との競争となりインドネシア人は不利。他方で台湾は賃金が低い。

 日本語能力検定N4合格は必須であるが、半年程度学習すればだれでも合格できるのでハードルは高くない。総合的に判断すれば日本での就労は魅力的ということになるらしい。

 他方でインドネシアの人口規模に比較して日本の在留インドネシア人が少ないのはイスラム教という宗教の障壁であるとA氏は分析。女性はヒジャブを着用するので日本の老人には違和感がある。食事は豚肉を調理した鍋、フライパンは使用できないので専用の調理道具が必要となる。バリ島は住民の90%以上がヒンズー教徒なので日本の生活に問題がないと指摘。

 2022年の在留外国人統計によると中国人78万人、ベトナム人45万人、韓国人43万人、フィリピン人28万人、ブラジル21万人、ネパール10万人、インドネシア人7万人。確かに2億7000万人の人口に比して在留インドネシア人が少ないのは一目瞭然だ。

山間部の農村の日本語学校

 あるとき、2人の可愛い女子が元気よく「オハヨーゴザイマス」と挨拶。聞くと2人は山奥の村の出身でゲストハウスの1つの部屋を2人で借りて近所の日本語学校で勉強しているとのこと。

 2人に案内されて日本語学校に行くとオーナー兼校長のB氏が大歓迎。B氏自身、福島県の農家で3年働いて帰国後に実家の建物を改装して日本語学校を開いたとのこと。

 生徒は現在50人。先生は他に4人、全員日本での就労経験者。午前の部は9時~12時、午後の部は13時~16時。午前・午後それぞれ25人ずつ勉強している。なんと20人超が遠い村の出身で、下宿生活しているという。残りの30人弱も大半が別の村の出身で延々とバイク通学している。

 1人の青年はN4合格して採用面接試験もパスして2カ月後に訪日して千葉県の農家で働く予定であった。教室の前に炊事場があり下宿生活している生徒が朝食を準備していた。

面接試験は純日本式昭和的雰囲気

 授業開始までしばらく時間があったので、採用面接試験の様子を撮影したビデオを見せてもらった。建設会社の採用面接で髪を短髪に刈り込んだ5人の男子が名前と受験番号が記載された大きな名札を胸につけた白い開襟シャツ、黒い長ズボンというリクルート・スタイルで背筋を伸ばして椅子に座っている。順番に名前、年齢、家族構成、得意科目、特技などを大きな声で自己紹介する。次に日本の面接官がスポーツは何が得意かなど簡単な質問をして順番に回答する。

 B氏によるとやはり元気よく大きな声で話すことが合否のポイントとのこと。卒業生の日本での就労分野は主として農業、建設、介護という。


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