医療福祉系大学の日本語クラスの熱気
散歩中に大きな大学があったので立ち寄ってみた。警備員が日本人のゲストが来たと連絡すると日本語教師というインドネシア女性が出てきて案内してくれた。私立大学で1学年200人、約800人が在籍。看護師、助産婦、栄養管理士、薬剤師を養成するコースがある。女子が半数以上で生徒の大半はバリ島出身であるがスラウェシ、スラバヤなど他地域出身者もいる。
看護師コースでは日本の受入機関と提携しており5年前から日本へ介護職として累計125人を送り出している。当日も午後から日本の関係者が視察と打ち合わせに来るという。
授業料は年間日本円で9万円相当。財団からの補助金があるので低く抑えられているという。ジャカルタの同様の医療福祉系私立大学が年間15万円とのこと。ちなみにインドネシアの平均年収は約40万円であり日本の10分の1。
日本語教師の女性は授業を中断して案内してくれたらしい。キャンパスを一通り案内してくれた後に彼女の日本語クラスを訪問。大教室に生徒が70人くらいおり女性教師が筆者を紹介すると大歓声。生徒が希望しているので講話をお願いしますとのこと。マイクを持って教壇から放浪爺さんの経歴、海外放浪歴、バリ島の感想などを段落毎に区切り日本語で話して英語で繰り返すと歓声と拍手の連続。最後に全員で記念撮影と相成った次第。
日本語は必ずしもインドネシアでブームではない
このようにしてバリ島の日本語の教育現場を訪問するとインドネシア全体で日本語がブームのように想像しがちであるが、それは違うようだ。インドネシアでも外国語学習のトップは英語である。公立小学校でも1年生から毎週2時間英語の時間が義務付けられている。インドネシアにおける外国語学習者のなかでは英語、韓国語についで日本語は第3位という。
高校の選択科目である第2外国語に日本語があるのでアニメなど日本文化が好きな高校生が日本語を学習している。インドネシアの日本語学習者の90%は高校での第2外国語選択者という。
韓国語は近年のKポップ、Kドラマの影響であろうか。ちなみに筆者はバリ島滞在中にTVやビデオでKポップ、Kドラマ(吹き替えまたは字幕付き)を散々見聞きしたがJポップ、Jドラマは記憶がない。唯一JKT48を一度だけテレビで見かけたくらいである。
なお、5年前にインドネシアのジャワ島、スマトラ島、スラウェシ島を放浪した時に地方都市で頻繁に見かけたのは中国語教室である。確かに多数の中国企業が中国に進出している現状からは中国語教室が繁盛するのは理解できる。
日本で就労するために平均年収3年分の借金を背負い込む
滞在中泊まった、あるゲストハウスのオーナーの2女は栃木の養鶏場で働いている。満3年経過したので年末に一時帰国するという。さらに1年延長する予定で最終的には累計5年就労してから故郷に戻る計画という。
オーナーによると5年間就労しないと元が取れないという。オーナーによると日本で就労するためにはエージェントに合計125万円相当を渡航前に一括で払い込む必要があるという。
エージェントによると125万円の半分くらいが日本語学校費用+航空券という説明らしい。残りについては必要手数料とのことで明細は開示されない。往復航空券が20万円、日本語学校授業料が10万円(月額1万円×6カ月+教材)と仮定しても30万円である。就労ビザ取得手続き代行料を数万円としても90万円超が不透明な手数料である。オーナーによると日本就労のコストとしてエージェントに払い込む費用125万円は一般的水準という。インドネシア人の平均年収40万円から換算すると年収3年分という莫大な金額だ。
オーナーは自己資金と親戚からの借金で資金調達した。しかし大半の親は銀行から高金利で借りるので日本に渡航してから1~2年間は銀行借り入れの元利返済でほとんど手元に残らないという。
現地紹介会社や監理団体を介在させる現行制度ではかねてから不透明な仲介費用が問題視されてきた。直接当事者から話を聞いて改めて日本の制度設計に疑問を感じるとともに闇の深さを想像した。