ホステルのゲストの半分はデジタル・ノマド
スミニャックのゲストハウスに17泊と長逗留。クアラルンプール経由でデンパサール空港に到着したが、預入荷物がロストバッゲージとなり1週間も待たされたことと、想定外にビザの1カ月延長手続きに日数を要したためである。
2段ベッドの並ぶ大部屋は1泊430円とスミニャック地区最安値。お陰様でさまざまな国からの多種多様なゲストと交流することになった。最初に仲良くなったのは筆者同様に長逗留しているジャカルタ出身のカリナ嬢25歳。両親は仏教徒だが、本人は自分で判断して改宗したプロテスタント。朝は10時過ぎまで寝ていて午後から深夜までベッドでパソコン作業している。
カリナはデータ・サイエンティストと名乗ったが、どうもウェブ・デザイナーの一種らしい。クライアントの希望に沿って写真を選択して加工してウェブ広告を作成している。本人はシャイな性格なのでオフィス・ワークは苦手という。
希望して過去4年リモートワークをしている。今年からカリナが勤務しているジャカルタの会社は社員全員を原則リモートワークにしたという。これでカリナも大手を振ってノマド(遊牧民)生活ができると喜んでいた。カリナによるとリモートワークはインドネシア社会でも予想外に広がっているという。
スロバキアの首都ブラチスラバから来たエレンはITアナリストだ。今回は3カ月の予定でアジアを旅している。彼女は3カ月海外旅行して数週間ブラチスラバの自宅に戻るという生活パターンを繰り返している。彼女はバイクで転倒して足に軽い怪我していた。
余談であるが、バリ島にはバスなどの公共交通機関がほとんどない。移動手段はバイク(モーターバイク、モータースクーターと呼ばれる)が一般的だ。欧米の旅行者はほぼ100%がバイクをレンタルしている。インドネシアは年間500万台近くバイクを生産・販売しているバイク大国である。ホンダが75%、ヤマハが20%という国内シェアを占めており、さらにスズキ、カワサキを含めるとジャパン・ブランド四社合計で97~98%と市場を独占している。
彼女は怪我が治るまでは仕事に集中するとのことで欧州時間に合わせて仕事を開始。クライアントの企業のシステムをチェックして問題点を指摘して改善策を提案するのが彼女の仕事だ。それゆえクライアントとのTV会議で直接議論することは不可欠らしい。その後数日してバイクに乗ってウブドに移動した。
学生や官僚までもデジタル・ノマドする時代
ある日夜更かししてラウンジのソファでバリ焼酎のマンゴージュース割りをチビチビ飲みながら他のゲストとおしゃべりしていた。午前2時頃ジャカルタから来たコミュニケーション専攻の女学生がジョイン。彼女はパソコンで課題のレポートを作成していたという。翌日彼女のベッドに行くと分厚いテキストを10冊も持参していた。偶然であるが数日後にやはりコミュニケーション専攻の女子学生がチェックインしてきた。彼女も熱心にPC作業していた。
ちなみに2人ともラジオ局のアナウンサー志望であった。インドネシアは島嶼国家である。各島にローカル・ラジオ局がありアナウンサーは人気職種らしい。
インドネシア政府の対外政策企画部門のS氏は若手エリート官僚。S氏も数日間2段ベッドのカーテンを閉め切りにしてパソコンワークに没頭していた。コロナ禍の間に役所でもリモートワークが定着して事前に届け出をすれば自宅以外でも自由にリモートワーク可能という。今回はバリ島に3週間滞在する計画だ。