今年9月、洋上風力発電を巡り、日本風力開発(以下、日風開)の依頼で国会質問をした見返りに多額の賄賂を受け取ったとして、秋本真利衆議院議員が逮捕・起訴された。脱炭素社会の実現に向け〝クリーンさ〟を売りにしていた洋上風力だが、皮肉にも国民に真逆の印象を与えることとなった。
秋本議員が国会質問に立ち、洋上風力発電の公募入札における「ルール変更」を求めたのが2022年2月17日。これは21年12月に公表された第1回の公募入札(ラウンド1)の結果、3海域全てを三菱商事率いる企業連合が落札した直後のことだった。実は同時期に、この結果に関する検証を頻繁に行い、発信していた大学がある。
再生可能エネルギー経済学講座――。
京都大学大学院経済学研究科で開講している産学共同講座である。13年の開講以来、再エネの大量導入を可能とする新しい電力システムのあり方に関する研究などをしている。
現在の参加企業は、日風開の100%子会社である「エネルギー戦略研究所株式会社」のみで、2人の取締役を含む同社の5人が「特任教授」として名を連ねる。研究成果について尋ねると、日風開の広報担当者は「年間50本程度のレポートを作成しているが、内容などについては非開示としている」と書面で回答した。
一方、同講座のホームページに設置されている「コラム」欄は更新頻度が高く、通算400回にも上る。ここで秋本議員の国会質問の前後にあたる22年1月から3月にかけて全10回にわたり「検証洋上風力入札」と銘打たれたシリーズが発信された。執筆者は「京都大学大学院経済学研究科特任教授」兼「エネルギー戦略研究所株式会社取締役研究所長」という肩書の人物だ。
第1回のコラム(22年1月6日付)では、三菱商事率いる企業連合の事業実現性の評価に疑義を呈した一方、日風開を含む他の事業者の事業実施能力を「折り紙付き」とし、第2回(1月14日付)でも日風開の名を挙げ、「事業実現性では最右翼とみていた」と評している。これは自らが取締役を務める会社の親会社を称賛しているともとれる表現ではないか。
また、日風開の副会長が代表理事を務める「日本風力発電協会(JWPA)」(注:23年10月18日付で退任)が政府に提出した提言について解説しているコラム(第8回<3月7日付>)では、協会の提言内容とコラムにおける主張は「ほぼ一致する」と記し、秋本議員への言及もある。
エネルギー業界の関係者は一連の発信をどう見ているのだろうか。複数の関係者は小誌の取材に対し、「主張が偏りすぎているのでは?」「『三菱商事憎し』の感情が露骨ではないか」と疑問を呈した。JWPAに属する風力業界のある社長も「誇張しすぎていると感じるが、大丈夫なのだろうか」と心配する。