2024年11月22日(金)

World Energy Watch

2023年10月24日

懸念される湾岸情勢への飛び火

 パレスチナ情勢での大きな懸念点が、イスラエルが地上軍事作戦の実施に踏み切った場合におけるイラン側の反応である。現在、イランの代理勢力がイスラエルや米国の出方を牽制するような形で武装活動を行っているものの、イラン自体は大きな軍事行動をとっていない。

 しかし米ニュースサイト「アクシオス(Axios)」によると、10月13日、イランのアブドゥルラヒヤーン外相は国連の中東和平担当特別調整官との会談で、イスラエルによるガザ攻撃が続けば、介入せざるを得ないと警告し、イラン参戦の可能性を示唆した。このように、イランはイスラエルおよび米国との対決姿勢をより一層強めている。

 また、イランはイスラエルを地域的孤立させるため、対イスラエル包囲網の形成にも努めている。10月18日にイスラム協力機構(OIC)加盟国に対し、イスラエルに対する石油禁輸を取るよう呼びかけた。また、イスラエルと外交関係を締結しているOIC加盟国には、イスラエルとの断交を求めた。

 こうした状況下、米国はハマスをロシアのプーチン大統領と並ぶ、米国の民主主義にとっての深刻な脅威であると名指し、イスラエルを全面的に支援する構えだ。このため、パレスチナ情勢の展開次第で米国・イラン間の緊張も高まるだろう。その場合、湾岸諸国は米国・イランとの関係で板挟みの立場に追い込まれる可能性がある。

 湾岸諸国は米国に安全保障面を依存する一方、最近はイランとの関係改善を進めてきた。特に、今年3月のサウジ・イラン関係正常化に係る合意は地域情勢の緊張緩和に貢献するものであった。このため、湾岸諸国としては、イスラエルの地上軍事作戦からのイランの介入、米・イランの対立激化といったシナリオを避けるため、イスラエルに自制を強く要請するしかない状況である。

 仮に湾岸諸国が、イランが求めるイスラエルへの石油禁輸やイスラエルとの断交に応じず(アラブ首長国連邦(UAE)およびバーレーンの場合)、イランがそれに対し不信感を募らせれば、イランの代理勢力が湾岸諸国側を警告するような武装活動に着手する可能性も否定できない。過去には、イエメンのフーシー派の無人機が19年9月にサウジアラビア東部の石油施設を、22年1月にUAE首都アブダビの石油施設を攻撃した経緯がある。

 世界の多くの国々がサウジアラビア・UAEから原油を輸入しており、特に日本は両国から原油調達率が全体の約8割に達する。このため、パレスチナから湾岸地域に戦火が移るとなれば、単に原油高の煽りを受けるだけでなく、日本の原油の安定確保が脅かされる事態となることは留意すべき点である。

「特集:中東動乱 イスラエル・ハマス衝突」の記事はこちら
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