2024年12月22日(日)

モノ語り。

2024年1月3日

 コロナ禍でテイクアウトやお取り寄せを利用した方も多いでしょう。私が「これは!」と思わず唸らされたのが、神戸・三宮センター街にある「オステリアブッコボロネーゼ」のボロネーゼです。妻がよく通っているお店で、冷凍真空パックされたボロネーゼソースを取り寄せたのが出会いでした。

(写真:鈴木優太)

 ボロネーゼは、普通はひき肉が入っているのが一般的ですが、オステリアブッコのボロネーゼは、シチューなどに入っているくらいの大きさのお肉が入っているのです。しかも、そのお肉はホロホロでよく煮込まれています。 私自身、イタリアは大好きで、新しい食事のメニュー開発をするためによく訪れます。その中でも思い出深いのは、2015年のミラノ万博の際、イタリア人のシェフから「パスタは日本の方が美味しい」と言われたことでした。まさにそれを体現しているボロネーゼなのです。

 代表取締役の藤川朋子さんは、その特徴をこう教えてくれました。「基本は、玉ねぎ、パセリ、ニンジンの香味野菜。それとハーブです。お肉は牛肉を基本にしてさまざまなものを試しています。煮込む時にビールを使うのがポイントです」。

人に料理を作るのが楽しい

 さて、このボロネーゼを生み出したのは創業者で現在顧問を務めている中村光伸さんです。顧問といっても、現在もよく厨房に立たれているそうです。北野町にあったイタリア郷土料理を出すレストランの煮込み料理がヒントになって「これをパスタソースにしたらいけるんじゃないか」と考え、シェフに声をかけたそうです。「最初は全くうまくいきませんでした。でも、半年もすると、家に帰れないほど忙しくなりました。お客さんの方が本物の味に気づいてくれたんだと思います」(中村さん)。

オステリアブッコ「ボロネーゼ」 のソースとパスタの「パッパルデッレ」「キタッラ」。両方とも「このお肉の大きさは何だ?」と驚いてしまう。しかも、柔らかくて美味しい(写真:鈴木優太)

 地元の報徳学園高校を卒業後、資金を貯めて居酒屋を開業したのを手始めに多くのお店を手がけてきました。タイのバンコクで和風パスタ店を成功させたこともあるそうです。「それでも、基本は神戸です。今も大阪方面から帰って来て、摩耶山、六甲山が見えるとホッとします。震災以降、神戸は変わりました。新しいものも必要なのでしょうが、古くからあるものも大事にしてほしいです。私の味覚を鍛えてくれたのも、子どもの頃に、姉が北野にあるイタリア、ギリシャ、スイスなどさまざまなレストランに連れて行ってくれたからです」(中村さん)。

 取材をしている最中にも外国人のお客さんがお店を覗いている様子が見えました。お目当ては「神戸牛ボロネーゼ」です。「Kobe Beefは外国の方にはインパクトがあるみたいで人気ですね。ただ、そのまま出すと値段が高くなるので、使用する部位を工夫しています」(中村さん)。その他、焼き肉で使わないホルモンを使ったホルモンボロネーゼなど、工夫を凝らしたメニュー開発を進めています。

お店で頂いた「神戸牛ボロネーゼ」(写真:編集部)

 「震災で7軒あった近所のお店が4軒潰れた時は、絶望しそうになりましたが、諦めたら駄目だと思いました。どうしたら喜んでもらえるかと考えながら料理をすることは本当に楽しいですね」(中村さん)。「中村さんは、今でも自分が作った料理をお客様が、どんな顔をして食べているか知りたいみたいで、よく厨房から、顔をのぞかせるんです」(藤川さん)と、根っからの料理好きなのです。私も同業者として、わざわざ自分の料理を食べに来てくれる、愛してくれることの喜びは本当によくわかります。

オステリアブッコボロネーゼ 兵庫県神戸市中央区三宮町3丁目6-11 078-391-1464
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世界を覆う分断と対立 異なる者と生きる術
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ハマスのテロ行為に端を発する「イスラエル・ガザ紛争」。イスラエルの自衛権行使は激化し、世界を二分する論争が巻き起こっている。この紛争に世界は、日本はどのように向き合っていくべきか。また、異なる価値観から生ずる「分断」や「対立」が世界を覆い、〝パラレルワールド〟が広がっている。怒りや憎しみ、誤解を乗り越え、「異なる者」と生きる術を考える。


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