注目される中国の動き
ところが、こんなレユニオン島が戦略的な重要性を増している。今回、国際会議が開かれたのは、そのせいだ。
今回の国際会議は、フランスのシンクタンクIHEDENがフランス政府と協力して、レユニオン大学で行ったものである。フランス首相府の国防安全保障事務局総長やフランス海軍の参謀長が講演し、フランス以外に、豪州、インド、日本からは筆者が呼ばれて講演した。今回の会議の内容はフランスの軍事雑誌の特集号にまとめられるのだが、同盟国・友好国全体にメッセージを送るために、仏語と英語、両方で作成される。
もしフランスが、自国のアフリカ政策を話すことだけが目的なら、日豪印の専門家を呼んで、まるで日米豪印4カ国の枠組みQUAD(クアッド)との連携を図るような会議を開く必要はない。何が起きているのか。答えは中国である。中国が地域一帯に進出を始めたからだ。
実は、中国にとって、ここはシーレーン防衛の拠点だ。中国は、南米から大豆など食料資源を大量に輸入しているが、その際に、非常に大きな船で運ぶ。トウモロコシなどは単価が安いから、小さな船で運ぶと、運送費ばかりかかって儲からない。そこで、大きな船で大量に運び、大量に売ることで儲けを出すのである。
ところが、大きな船は、パナマ運河を通れない。そこで、南米から大西洋を渡り、アフリカの喜望峰を通り、レユニオン島もあるアフリカ東岸を通って、インド洋を渡り、南シナ海を通って中国の沿岸諸都市まで運ぶルートを通るのである。
さらに、レユニオン島周辺のアフリカ東岸とその海底には、レアア―スを含め数多くの資源があり、開発が計画されている。それも中国にとっては魅力に映っている。
問題は、中国の傾向だ。中国は、他の国々を全然信用していないから、このシーレーンや資源を、中国海軍だけで守ろうとしている。そして、アフリカ東岸で、次々、港の建設を開始し、中国海軍の展開も進めている。