2024年12月4日(水)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年12月27日

 この男性は上海に日本人の知り合いも多いが、コロナ禍の途中から、日本に本格的に帰国する駐在員が増えたという。そのため、日本人向けの居酒屋などの中には閑古鳥が鳴いている店もあるそうだ。福島第一原発の処理水問題が起きてからは、海産物の提供を少なくし、焼き鳥など他の料理をメインにする日本料理店が増えたが、一部の人気店を除き、中国人の客足は減っているのではないかと推測する。

 「日本と接点があって、日本のニュースにもアクセスできるような人は処理水問題を気にしていませんが、全体的にみれば、やはり気にしていますね。日本料理に限らず、外食自体を減らす人も増えていると感じます。これも景気が悪化して、生活面に不安があることが要因だと思います」

不安定な雇用

 広東省在住の20代の男性は、同僚の転職が減ったと話す。

 コロナ禍の前は毎月のように社員の誰かから「退職・転職の挨拶」がSNSで送られてきたが、このところ転職が難しくなっていることから、転職をせず、現状維持を決め込む人が多いという。企業側は人材確保が難しいため、現在雇用している社員に在宅勤務を許可する、特別手当を出すなど、あの手この手で人材を引き留めているという。

 「いま仕事がある人はましですが、仕事があっても給料が目減りしている人も増えていると聞きます。自分の会社は大丈夫ですが、地方の公務員の中には給料が数カ月も未払いのままで困っている人が多い。SNSでもそうした苦境を訴える動画を目にします。

 不動産不況とも関係しますが、地方政府の財政悪化は2024年にはもっと露呈し、深刻化すると予想しています。中国恒大集団など不動産企業の経営難の影響で、地方の建設関連企業、その下請け企業、日雇い労働者にも生活苦が広がっていると思います。もちろん、そうしたマンションを買う予定だった人もマイホームのあてが外れてローンだけが残るなど苦境に立たされています。

 そういった状況ですから、明るい話題は少ないですね。日本では今年、予想以上に中国から観光客が来なかった、という話があるそうですが、以前と違い、海外旅行に行けるのはごく一部の富裕層などに限られる。銀行員や公務員の中にはパスポートを上司に取り上げられている人もいますし、先行きが不透明な中で、生活必需品以外のお金を使いたくないという人も多い。おそらくこの傾向は2024年も続くと思います」

 この男性はこう話す。

 政府は若者層の失業率について7月以降、発表をやめた。そのため、どの程度の若者が就職できない状況にあるのか、データで判断することが難しくなっている。

 企業の就職説明会には大学院卒の学歴を持つ若者が長蛇の列をなし、公務員試験にも受験者が殺到しているが、高学歴でも就職できず、アルバイトでしのぐ人が増えている。職にあぶれる若者がふえれば、社会不安にもつながることが懸念される。


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