2024年11月22日(金)

バイデンのアメリカ

2024年1月2日

 その一つの重要指標として、それぞれの州における「党支持率」がある。今年大統領選での候補者を特定せず、有権者がどちらの党を支持するかを聞き取り調査したものだ。「党支持率」は一般世論調査と比べ、目先のムードや時勢によるぶれが少ないことでも知られる。

 「Pew Research」が昨年実施した調査結果によると、アリゾナ州で「民主党46%、共和党40%」、ミシガン州で「民主党47%、共和党34%」、ネバダ州で「民主党46%、共和党37%」、ペンシルベニア州で「民主党46%、共和党39%」と、4州で民主党がリード。そして、ジョージア州とウィスコンシンの2州においては、両党がそれぞれ「41%」「42%」と同じ支持率となっている。

 一方、上記6州で候補者をバイデン大統領、トランプ前大統領に特定した「New York Times-Siena College」共同世論調査結果(昨年11月)によると、トランプ氏がウィスコンシン以外のアリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネバダ、ペンシルベニア5州でリードしていることが明らかにされた。

 ワシントンの政治アナリストたちの間では、これら二つの調査で、①党支持率では民主党がリード、②特定候補に絞った場合はトランプ候補が優勢――という相異なる結果が示されていることについて、解釈が分かれている。ただ、前2回と同様、今回もこれら6州においても最後まで接戦が続き、その結果次第で次期大統領が決まるとの見方が大半を占めている。

国民の生活をも左右する経済動向

 第二に、勝敗を大きく左右するとされるのが、今年後半にかけての米国経済の推移だ。 経済状況が現職大統領の再選に影響を与えた過去のケースとして①ドナルド・レーガン大統領当時の1984年選挙、②バラク・オバマ大統領(民主)当時の2012年選挙、③トランプ氏が大統領だった20年――の3つがしばしば引き合いに出される。

 1984年選挙では、レーガン候補がウォルター・モンデール候補(民主)相手に地滑り的勝利を収め、再選を果たした。

 この年の経済指標を見ると、国内総生産(GDP)が6%も上昇する一方、失業率は1%下落。消費者および企業によるモノ、特に輸入品購買は当時のドル高通貨レートに支えられ大幅に伸長した。一般個人消費も賃金上昇を反映して活況を呈し、自動車、家具などの耐久消費財販売が好調だった。前年に比べ、消費者心理が目立って好転した年だった。

 2012年選挙は、オバマ氏とミット・ロムニー候補(共和)の一騎打ちとなったが、得票率3.36%の僅差でオバマ氏が再選された。

 同年の米国経済は、前半こそ経済界全体に広がった財政赤字拡大への懸念などから、経済成長も鈍化傾向にあった。しかし、後半に入り、連邦準備制度理事会(FRB)による2度の金融緩和措置が功を奏するとともに、政府による不良銀行整理などが進んだことなどから、住宅需要が回復。さらにクレジットカード・ローンの不安を抱える一般消費者心理も好転し、自動車、家具などの購買も息を吹き返した。

 結果的に、年間2.2%の経済成長となり、失業率も前年の8.5%から7.9%に改善した。物価上昇率も、年間通じ1.7%にとどまった。

 しかし、20年大統領選においては、コロナ危機の甚大な影響による国内経済全般の不振が大きな影を落とし、当時のトランプ大統領の再選を阻む結果につながった。

 具体的な同年経済指標を見ると、全米が新型コロナウイルス感染拡大の直撃を受けた結果、企業倒産、事業縮小が相次ぎ、GDPは戦後最悪となる3.5%のマイナス成長を記録した。とくに感染率が急上昇し始めた同年4月以降、1000万人以上が仕事を失い、年間通じた失業率は6.7%に達した。感染による死者も40万人以上となった。

 なお、本来なら、同年のようなコロナ危機自体、未曽有の自然災害であり、それがただちに時の政権批判につながるとは限らない。しかし、トランプ大統領の場合、コロナ感染発生当初から、事態を軽視し続け、ワクチン開発、国民のマスク着用などの対応にも消極的だったことで深刻な危機を招いたとの批判が相次いだことも、少なからず選挙結果に影響したとみられる。

 そこで問題となるのが、今年の米国経済だ。


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