産業革命時に約8億人だった地球の人口は、経済成長により飛躍的に伸び80億人になりました。経済成長と人口増を支えたのは化石燃料です。
温室効果ガスの中で最も多いCO2の大気中の量は、産業革命により人類が石炭の本格的な利用を始めてから上昇を始めました。産業革命時に270ppm(パーツ・パー・ミリオン、100万分の1)だったCO2濃度は400ppmを超えました。
化石燃料が排出する大気中のCO2の濃度の変化(図-1)が平均気温の上昇に影響を与えたと考えられています。米国海洋大気庁のデータでは、地球の気温は過去1880年から2023年の間に波を描きながら約1.4℃上昇しています。
温室効果ガスの種類
先進国は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局に、毎年の温室効果ガスの排出量を報告する義務があります。報告の対象となるガスは次の7種類です。CO₂、メタン(CH₄)、一酸化二窒素(N₂O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、六フッ化硫黄(SF₆)、三フッ化窒素(NF₃)。
ただ、温室効果を最ももたらしているのは、上記の7ガスではなく、大気中の水蒸気と考えられています。水蒸気は広い波長域で赤外線を吸収するためです。
米国エネルギー省は水蒸気の温暖化への寄与率を36%から72%としていますが、水蒸気量は自然の仕組みでもたらされるものなので、私たちはコントロールできません。
私たちの人為的な活動が温暖化に与えた影響を見ると、産業革命以来排出してきたガスのうちCO2が温暖化に最も影響を与えています。温暖化への寄与率は、CO2が約6割、メタンが約2割、一酸化二窒素とHFCsとPFCsのフロン類などが約2割とされています。
メタンは天然ガスの主成分ですが、湿地などの自然由来に加え、家畜(牛のゲップなど)、天然ガス採掘時などの人為的な行為からも排出されます。フロン類はエアコン、冷蔵庫の冷媒に使われます。一酸化二窒素は窒素系農薬使用、下水道処理などから排出されます。六フッ化硫黄は高電圧機器の絶縁などに利用されています。
排出量が相対的に多くないメタン、フロン類などの温暖化への寄与率が高いのは、排出されるガスにより温暖化を引き起こす度合いが異なるためです。
CO2が温暖化に与える影響を1とすると、CO2と同じ量のメタンは28倍程度の温暖化効果を持ちます。この温暖化効果を温暖化係数(GWP)と呼びます。
フロン類はガスにより異なりますが、高いものは1万を超えます。一酸化二窒素は265倍になります。排出量が僅かでも温暖化への寄与度は高くなります。
どの地域・国が温室効果ガスを排出しているのか
日本と米国の温室効果ガス別の排出割合は図-2の通りです。米国の排出量との比較では日本のCO2排出量の比率は高くなっています。米国はGWPの高いガスの排出削減により温室効果ガスを比較的効率的に削減可能ですが、日本はエネルギー起源のCO2の削減を進めることが必要になります。
他の先進国との比較でも日本はCO2排出量が相対的に多い国です。要は、日本は化石燃料の消費減により温室効果ガスの排出量の削減を進めなければならない立場です。