2024年11月25日(月)

Wedge REPORT

2024年2月19日

新しい形の日本人気質を作っていく

 少子高齢化で人口が減少していく日本は、今まで以上に外国市場に活路を求めていかないと経済を維持できない。維持できなければ国力もこれまで以上に減退する。しかし、日本とは異なる文化や環境に対してうまく折り合いをつけるしかない。

 「能登半島地震、羽田空港での日本航空機の事故で乗客全員が無事避難できたことは、他者との関係性の中でバランスを取ろうとする性格が出ました。また、勤勉でコツコツと働く姿勢は世界で評価されています。例えば、フランス国内の有名レストランのナンバー2は日本人が多かったりします」と、勤勉性は海外でも強みとなる。

 ただ、同時に難しさもあるという。「近年、個人主義が入ってきました。これまで人との関係性の中で生きてきたので、個人主義がどういうものなのかは理解しきっていません。ネットの世界では、自分の意見を言うだけでたたかれる可能性がある世の中ですが、その中でも若い世代は『私なり』、『自分なり』を模索しています。ここに摩擦が生じて、落としどころを見つけられていないのが現状だと思います」

 模索していたバランスを見つけられず大きく崩したのがトヨタだ。「上司はパフォーマンスばかりに焦点を置き、下の者は上の目を気にすると自浄能力がなくなり、反省して、改善する日本人の良さが消えてしまいます」とトヨタの代名詞であるカイゼンが消え、不正にまで発展してしまったと解説する。

 「管理体制を強くするというより、見守りながら、締めるところは締める感じがいいのだと思います。新しい形のインターデペンデンス(相互依存関係)を作らないといけないでしょう」

 また、「日本の壊したほうがいいシステムもありますが、欧米の価値観に基づいた個人主義だけをいれると日本社会は崩壊する可能性が高いです。欧米のインディペンデンス(自主性)を混ぜた、新しい日本的なインターディペンデンスを確立するべきです」と唐澤教授は繰り返した。

 「日本人は強い人、できる人より優しい人のほうが好きだと思いますからね」

 新気質を作るにはそれなりの時間がかかる。今は「その過渡期」だそうだが、双方の良いところ取りができれば、足腰の強い新しい日本経済が生まれる可能性は低くない。

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