2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2024年2月19日

 さらに「先読みや予測が好きな国民性で、時には忖度となってしまいますが、それを考えながら行動します。人事を尽くして天命を待つではないですが、結果よりプロセス重視です。幼い時からプロセス重視の教育を受けてきたのに、会社でいきなり結果を出せと言われても大変です。成果主義が叫ばれて久しいですが、日本にいまだに馴染まないのはそういったところがあると思います」

労働者が経営者に意見ぶつけられず、賃上げ実現せず

 賃上げのムードが高まり、今年もベアが行われる流れになっているが、これまでの成果主義を取り入れようとしてきた状況と矛盾する。「本当にベアを長らく保てるのであれば悪くありませんが、維持できるのか……」と唐澤教授は疑問を呈す。

 日本の給料が上がらなかった理由の1つとして、労働組合の組織率の低さ(厚生労働省によると2023年の組織率は16.3%)や、1980年代までは頻発していたストライキが減ったことなどが考えられる。2023年のハリウッドのストライキは労働者の権利を獲得することに有効だというのがわかるが、バブル崩壊後は会社が倒産しては意味がないという論理や反社会的というイメージが強くなりストライキをしなくなった。ストライキを継続していれば、現状より給与水準は上がった可能性はある。

 ほとんどの労働者が経営層に就くことがないまま定年を迎えるが、ストライキについて世論は、労働者側ではなく経営者側につくことが少なくない。「長年、教育現場を見てきましたが、小さい頃から自分の意見を言うという事をしません。その辺りの教育も考えないといけないですね」と唐澤教授は語る。

 賃上げはまさに交渉だが、自分の意見を経営側にぶつける土壌が形成されていないという。結果、経営側主導となり賃上げが進まなかった。

 最近、転勤しない形の雇用が増えつつある。これまで転勤する場合、夫婦でいえば、単身赴任を除いて妻の方がキャリアを諦めて夫の転勤地に引っ越すケースが多い。身体的な機能に男女差はあっても、脳がつかさどる能力には男女で明確な違いはないことが分かってきており、女性活用できず日本の国力を下げる要因になっている。

 「例えば、米国の大学で男性教授が違う大学からオファーをもらった場合、大学側は妻の新天地での仕事のケアもします。個人主義と思われがちですが、家族と女性のキャリアに配慮しているのです」。日系企業も実行すれば、女性活用、人材不足解消、離職率減少などにプラスの効果をもたらすはずで、一考の余地がある。


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