2024年に入り、香港の今後を懸念させる出来事が続いている。1月29日に、香港高等法院(高裁)は、経営再建中の中国不動産大手の中国恒大集団に清算を命じた。債権者達が経営再建に合意できていない現状からして当然の命令であるが、実際には同社の資産の大半は大陸にあり、今回の命令によって清算が進む見通しは立たない。図らずも香港が中国経済に及ぼす影響力の限界を再確認させることとなった。
1月30日には、香港政府が「国家安全条例」の制定に着手したと報じられた。同条例の制定自体は「香港基本法」(1990年に中国の全国人民代表大会で採択)において将来の義務として規定されており、李家超行政長官も24年中の条例制定を明言していた。しかし、20年6月末施行の「香港国家安全維持法」に加えて香港独自の「条例」を制定することは、経済活動に悪影響しか及ぼさないであろう。
1月31日に公表された香港の23年国内総生産(GDP)成長率は、前年比3.2%増と多くのエコノミストが予想した中央値(3.4%)に届かなかった。これらのニュースはいずれも、香港の今後に対する懸念を強めるものだったといえる。
海外の評価も悪化
これに先立って、海外の香港経済評価も悪化してきていた。フレーザー・インスティチュート(カナダのシンクタンク)が毎年公表している「世界経済自由度年次報告」の23年版では、香港は前年の1位(指数8.59)から2位(同8.55)に低下した。1位のシンガポール(同8.56)と僅差とはいえ、象徴的なニュースである。
また、23年1月に日本貿易振興機構(JETRO)が公表した「香港を取り巻くビジネス環境評価」(在香港日本企業へのアンケート調査)では、香港のビジネス環境は安定している(「変わらず」)とする企業が61.2%であったものの、項目によっては「悪化、大きく悪化」との回答が、人材確保で52.6%と半数を超えたほか、物流環境で31.1%、為替変動で29.6%と3割に達した。その後の情勢の推移からして、同調査発表後に企業の判断が好転したとは思われない。