2024年4月15日(月)

Wedge REPORT

2024年3月27日

 年功賃金を理論的に説明するひとつの考え方として、「後払い賃金仮説」と呼ばれるものがあります。これは、『人事と組織の経済学』の著者として知られる米スタンフォード大学のエド・ラジア教授によって提唱されたものです。

 この仮説では、賃金カーブを労働者の生産性のカーブよりも急な傾きに設定します。つまり、図が示すように、企業は労働者が若い頃には生産性を下回る賃金を払い、労働者が年を取ったときには生産性を上回る賃金を支払うことになります。

 この賃金体系で重要なのが定年退職です。勤続年数が長くなると、賃金が生産性を上回るため、勤続年数の長い労働者は離職をしようとしません。しかし、それでは企業は損をしてしまうので、企業はあらかじめ雇用関係の終了時期を決めておく必要があります。これが定年制です。

 定年退職年齢は、労働者の企業への貢献度(生産総額)と賃金が一致するように決定されます。つまり、下記図のAとBの面積が等しくなるように定年退職年齢が決定されます。

 この賃金体系のメリットは、労働者のモチベーションを向上させ、企業へのエンゲージメントを高めることです。この賃金体系のもとでは、労働者は若い頃に勤務不良などによって解雇されると、将来に高い賃金を得るチャンスを失うため、長期間真面目に働くインセンティブが生まれます。

今や機能不全

 ただし、この賃金体系が上手く機能するためには、前提条件があります。それは、企業が長期にわたり安定的に存続することです。もし途中で企業が倒産してしまうと、将来の高い賃金を目当てに、若い時期に生産性よりも低い賃金で我慢していた労働者は損をすることになります。また、会社都合により途中でクビにはしない、言い換えれば終身雇用が前提となっています。


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