しかしながら、終身雇用や年功賃金といった日本的雇用慣行は時代遅れのものとなり、機能不全に陥り、弊害までもたらすようになっています。
かつて、日本的雇用慣行は、失業率を低く抑え、良好な労使関係を築く日本的経営の強みのひとつとして、世界から称賛されたものでした。しかし、その前提条件が大きく変化し、合理性が低下、機能不全に陥っています。
日本的雇用慣行が広く普及、定着した背景には、持続的な高い経済成長と若い人口構造がありました。しかし、バブル崩壊後の日本経済は、「失われた20年」と称される長期停滞を経験し、同時に少子高齢化が進み、人口構造が大きく変化しました。
つまり、日本的雇用慣行の舞台を支える2本の柱はすでに崩壊しているのです。それにもかかわらず、古いシステムが維持されているため、労働市場にさまざまな矛盾や問題が生じています。
失われている「多様な視点」
日本的雇用慣行は、専業主婦を持つ男性正社員を中心に構築されています。そのため、高齢者や女性、非正規社員は考慮されていません。それゆえ、日本的雇用慣行を維持しようとすれば、高齢者の就業が難しいだけでなく、女性が働こうとすると仕事と家庭の両立が難しかったり、正社員と非正規社員間で大きな格差が生じたり、さらには、正社員も終身雇用で守られることの代償として、長時間無限定就業や転勤など受け入れざるを得なくなっています。
時代遅れの雇用形態に固執することで、さまざまな弊害が発生しています。この古い体質の雇用慣行を維持することは、労働市場の柔軟性を損ない、日本の労働生産性を低下させる要因にもなっています。