〈生成AIか、ドローン撮影か？〉中国から拡散する海自護衛艦「いずも」の異常接近映像。日本政府の対応は適切か？

　翻って、今回の動画に関する防衛省と海自の対応はどうだろうか。国家防衛戦略は「偽情報の流布等に対応したファクト・チェエク機能やカウンター発信機能等を強化し、有事はもとより、平素から、政府全体で対応していく」とし、防衛力整備計画では「各国による情報発信の真偽を見極めるためのSNS情報を自動収集する」としている。

　しかし、防衛省と海自の対応を見る限り、ファクト・チェックやカウンター発信はおろか、SNS情報の自動収集も未だ整備されてないようだ。認知領域での情報戦において「沈黙は金」ではない。

見えてきた怪しげな投稿者の素性

　最後に少し答え合わせてしてみよう。

　動画の投稿主は動画共有サービスに、陸上と空中から撮影した「いずも」の写真4枚を投稿していたのだ。時期は動画投稿日と同じ、3月26日。「いずも」のAIS（船舶自動識別装置）情報を調べると、同艦は3月7日に横須基地帰投後、岸壁に係留されていた。

　だが、この投稿主が共有しているのは「いずも」の動画（現在は削除）と4枚の写真しかなく、ドローンの撮影を趣味とする人物とするには不審な点が多い。

　筆者は今回の動画問題について、「噂レベルだから」とか、「確認していない」などとして、防衛省がダンマリを決め込むレベルを超えていると考える。むしろ、警察庁などと協力して自衛隊基地周辺でのドローン飛行が違法であることをアピールすべきだし、対ドローン兵器の装備や基地警備への応用を推進すべきだろう。

　そして、防衛省と海自には、人の心に石を投げ込んで波紋を引き起こす企てを、ファクトを示して一刀両断にしてもらいたい。