2024年11月21日(木)

World Energy Watch

2024年4月4日

補助金が左右したドイツのEV販売

 昨年12月16日、ドイツ政府はEV補助金の打ち切りを突然発表した。発表時点で申請を受付け済みのEVまでが交付対象になった。

 車種により異なる補助金は3000ユーロから4500ユーロ(約50万から75万円)。販売に大きな影響を与える額の打ち切りだったので、一部メーカーは補助金額の負担を発表する騒ぎになった。

 打ち切りの理由は予算の枯渇だ。連邦政府はコロナ禍対策の未使用予算約600億ユーロ(約10兆円)を気候変動・エネルギー転換事業などに流用したが、11月に連邦憲法裁判所が違憲と判断したため、政府は予算削減を強いられた。

 22年の年末にも補助金額の引き下げがあり、23年1月のEV登録台数が前月の10万4300台から1万8300台に8割以上落ち込んだ。前回と異なるのは突然の打ち切りであり駆け込み需要がなかったことだが、メーカーの補助金肩代わりが功を奏したのか、販売台数の落ち込みは少なかった。

 今年1月と2月のドイツのBEV(バッテリー稼働)、PHEV(プラグインハイブリッド)、HV(ハイブリッド)、ガソリン、ディーゼル車の登録台数は図-1の通りだ。BEV、PHEVのシェアは、前年同期との比較で13.1%から11.6%、5.4%から6.7%と合計で0.2%の下落だ。HVのシェアは23.8%から24.8%にわずかに伸びている。

欧州では順調なEV、HV一人勝ちではない

 欧州連合(EU)27カ国にスイス、ノルウェー、アイスランドと英国を加えた欧州市場の今年1月と2月の販売台数を図-2に示した。BEVとPHEVのシェアは、前年同期と比較するとそれぞれ11.7%から12.5%、7.1%から7.6%に、HVのシェアは26.2%から29.0%に伸びている。

 HVの一人勝ちと呼べる状態ではないが、充電ポイントが少なく(図-3)、EV補助金もない東欧諸国を中心にHVの需要は堅調だ(「中国が仕掛けたEV蟻地獄に陥る欧州、日本の行方は」)。

 エネルギー危機以降の電気料金の値上がりが、HV人気を高めることになった側面もあるだろう。ドイツの家庭用電気料金は昨年のピークから少し下がったが、今年初めの時点で1キロワット時(kWh)当たり42.22ユーロセント(約70円)だ。一方、ガソリン価格は1リットル(L)当たり1.9ユーロ(約310円)だ。

 EVの電費を7キロメートル(km)/kWh、HVの燃費を22km/Lとすると、1km走行当たりのエネルギー価格は10円と14円だ。これでは価格の高いEVを購入するインセンティブにはならないだろう。


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