3月27日に開幕したニューヨーク自動車ショーに先立ち記者会見した米国メルセデス・ベンツのDimitris Psillakis最高経営責任者(CEO)は、「電動化に向かっているが、時間がかかる。マラソンであり、短距離走ではない。電動化はインフラ次第だ。充電時間と航続距離が問題だ」と述べている。
米国の販売に占めるBEV、HV、PHEVのシェアが示すように、BEVのシェアの伸びが鈍化しPHEVが伸びているが、その理由の一つは充電ポイントがまだ充実していないことだ。
米国の公共の全ての充電ポイントは6万2565個所だが、都市部に集中している。日本より広いモンタナ州の充電ポイントは数十カ所しかない(図-5)。都市部以外での広がりには、電池能力向上などが必要だ。
世界のEV生産の65%を握る中国の現状
23年世界のBEVとPHEVの販売台数は、前年比35%増の1418万台だった。中国の販売台数は841万台に達し、世界シェアの約6割だ(図-6)。中国でのEV販売台数が世界の自動車市場のEVシェアに大きな影響を与える。
中国は、太陽光パネル、風力発電設備で世界市場を握るため国内で大きな市場と設備供給者を育て覇権を握った。EVでも同じ手法を取っている。国内で市場を作りEV製造の自動車会社を育て世界市場を握る戦略だ。
一番手BYDはBEVとPHEVを合わせば22年生産台数世界一だったが、昨年第4四半期にはBEVだけの台数でもテスラを抜き世界一になった。23年の中国のEV生産台数930万台の内BYDが約300万台を生産している。中国は世界のEV生産の約3分の2を握り、西側ブランドでの輸出台数も50万台になった。
今年1月の主要15カ国でのEV (BEV+PHEV)販売台数が、前月から44万台減少し、さらに2月の台数は1月から22万台落ち込んだ。EV販売失速だが、これは例年起こっていることだ。中国市場の与える影響が大きいからだ。
中国の自動車販売は春節により例年1、2月に大きく落ち込み年末に向けて販売が増えていく。
今年2月の中国のBEV販売台数は前年同期比21.8%減の29万4000台だった。PHEVの販売は22.4%増の18万3000台だったが、合わせても前年同期比販売台数は減少している。
昨年の春節の休みは1月21日から27日だったが、今年の春節休みは2月10日から17日までだった。その影響だ。
中国の販売台数は2月までの累計を見なければいけない。今年1月と2月の合計のBEVとPHEVの販売台数は、それぞれ74万台、47万台。昨年同期比では、それぞれ11.7%増、72.8%増だった。中国のEV市場は依然成長している。
昨年1月の世界のEV販売台数は前年12月から63万台も落ち込んでいるが、これも春節の影響だった。主要15カ国の今年1月と2月の合計EV販売台数158万台は、前年同期比28%増になっている。
EV市場は着実に伸びているが、一部の欧米メーカーが期待したほどのスピードで伸びてはいない。価格、充電ポイント、重要鉱物の中国依存など解決すべき課題も多い。
EV市場拡大が中国依存を作り出すことも大きな問題である以上、内燃機関でのバイオ燃料、あるいは水素の利用も視野に、幅広い技術を維持することが重要な時代だ。