2024年6月18日(火)

Wedge2024年4月号特集(小さくても生きられる社会をつくる)

2024年4月16日

イノシシをいかに活用できるか?
試行錯誤の末、加速した「地元創生」

 農家ハンターでの活動に、入会費や年会費は必要ない。「傷んでいる農家からは1円も取らない」「補助金には頼らない」のが彼らのモットーだ。

 19年には株式会社イノPを立ち上げ、獲ったイノシシを最大限活用するために「ジビエ☆ファーム」を建設したが、その際には地元の信用金庫が数千万円単位の融資をしてくれた。宮川さんは「僕たちの希望を信じてくれました」と照れくさそうに話す。

「ジビエ☆ファーム」ができた2019年は奇しくも、イノシシ年だった。21年には農林水産省から『国産ジビエ認証』も取得している

 イノシシをジビエ加工すると、使用しなかった分は「動植物性残さ」という産業廃棄物としての処理が必要になる。個体によっては100キログラム近くあるイノシシだが、処理費は1キログラムあたり約150円掛かると言われる。

 この出費を抑えながら、命をありがたくいただき、最大限活用するために、福岡県のメーカーと共同開発したのが堆肥化設備だ。もとは豚用の機器だったものに改良を重ねたという。残さを投入してから約5時間でサラサラの堆肥になるというから驚きだ。

堆肥になったイノシシの残さ。豚と違い、イノシシは長くて硬い毛を持つため、設備の開発にも苦労したそうだ

 今では県内外のさまざまな人たちに技術を伝承するほか、自治体職員向けの研修も行っている。

 冒頭のジビエツーリズムでも、山の中にある罠やジビエ施設に子どもたちを案内する。「どうして捕まえないといけないのか」を伝えながら、箱罠に呼び込むための餌付けも体験させる。

 さらに、ツアー後も継続して関心を持ってもらうため、餌付けした罠に併設しているカメラの映像リンクを教えている。そうした仕掛けが子どもたちの体験的な知性を育くむことにもつながる。

 「地方創生という言葉は都会目線。僕たちがやりたいのは、農家による『地元創生』ですね」

 本稿に出てきた3つの「☆」には、「地元を輝く星のように」と願う宮川さんたちの想いが込められている。

   
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Wedge 2024年4月号より
小さくても生きられる 社会をつくる
小さくても生きられる 社会をつくる

全都道府県で人口が減少――。昨年7月の総務省による発表に衝撃が走った。特に地方においては、さらなる人口減少・高齢化は避けられない。高度経済成長期から半世紀。人口減少や財政難、激甚化する災害などに直面する令和において、さまざまな分野の「昭和型」システムを維持し続けることはもはや限界である。では、「令和型」にふさわしいあり方とは何か――。そのヒントを探るべく、小誌取材班は岩手、神奈川、岐阜、三重、滋賀、島根、熊本の7県を訪ね、先駆者たちの取り組みを取材し、「小さくても生きられる社会」を実現するにはどのようなことが必要なのかを探った。


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