イノシシをいかに活用できるか?
試行錯誤の末、加速した「地元創生」
農家ハンターでの活動に、入会費や年会費は必要ない。「傷んでいる農家からは1円も取らない」「補助金には頼らない」のが彼らのモットーだ。
19年には株式会社イノPを立ち上げ、獲ったイノシシを最大限活用するために「ジビエ☆ファーム」を建設したが、その際には地元の信用金庫が数千万円単位の融資をしてくれた。宮川さんは「僕たちの希望を信じてくれました」と照れくさそうに話す。
イノシシをジビエ加工すると、使用しなかった分は「動植物性残さ」という産業廃棄物としての処理が必要になる。個体によっては100キログラム近くあるイノシシだが、処理費は1キログラムあたり約150円掛かると言われる。
この出費を抑えながら、命をありがたくいただき、最大限活用するために、福岡県のメーカーと共同開発したのが堆肥化設備だ。もとは豚用の機器だったものに改良を重ねたという。残さを投入してから約5時間でサラサラの堆肥になるというから驚きだ。
今では県内外のさまざまな人たちに技術を伝承するほか、自治体職員向けの研修も行っている。
冒頭のジビエツーリズムでも、山の中にある罠やジビエ施設に子どもたちを案内する。「どうして捕まえないといけないのか」を伝えながら、箱罠に呼び込むための餌付けも体験させる。
さらに、ツアー後も継続して関心を持ってもらうため、餌付けした罠に併設しているカメラの映像リンクを教えている。そうした仕掛けが子どもたちの体験的な知性を育くむことにもつながる。
「地方創生という言葉は都会目線。僕たちがやりたいのは、農家による『地元創生』ですね」
本稿に出てきた3つの「☆」には、「地元を輝く星のように」と願う宮川さんたちの想いが込められている。