65歳以上の3割以上が難聴
しかしこうなると、できる限り難聴を回避したいところだが、そもそも難聴とはどういう状態を言うのだろうか。
「難聴とは聞こえにくい状態のことで、多くの病気が原因となり生じる症状です。私たちは、外から集めた音(振動)を耳で電気信号に変えて、脳に伝えています。外耳から中耳、内耳を経て脳に伝わる一連の経路を聴覚路と言いますが、そのいずれかに異常や機能低下が起こると、脳に伝わる電気信号が少なくなって、聞こえが悪い状態、難聴になります。
年齢が高くなるにつれて増えてゆく加齢性難聴は、内耳(図参照)の中にある1万6000個ほどの有毛細胞が折れたり抜け落ちたりすることで引き起こされるもので、今のところ、治療法がありません」
私たちの耳には20Hz(ヘルツ)の低い音から2万Hzの高い音までの幅広い音を聞き取る力があるというのだが、年齢を重ねると、高い音から聞きづらくなっていくという。
難聴レベルは4段階
「難聴の程度は、どれだけ小さい音まで聞こえるかによって分類され、音の大きさは聴力レベルdB(デシベル)で表わされます」
「25dB(木々のそよぎ音までが聞こえる程度)なら正常聴力、26〜39dB(小雨の音が聞き取れない程度)だと軽度難聴、40〜69dB(日常会話に支障をきたす程度)だと中等度難聴、70〜89dB(ピアノの音が聞こえない程度)では高度難聴、車のクラクションが聞こえない90dB以上だと重度難聴になります。そして中等度難聴以上になると、補聴器が必要になります」
加齢性難聴の患者数は年齢が高くなるにつれ増えていき、65歳以上では3割以上が難聴、75歳以上ではおよそ半数が難聴だと言われている。
「難聴を悪化させる原因には、糖尿病や高血圧などの生活習慣病や騒音などがあります。高血圧や高コレステロールなどで血液がドロドロになると、それだけ小さな内耳という器官が障害されやすくなるのです。また、大きな音などで耳に負担をかけることも難聴の原因になります。ですから、地下鉄など騒音の中で音楽をイヤホンで聞き続けている人は注意したほうがいいでしょう。
とはいえ、加齢性難聴になるか否かは遺伝的な理由が大きいので、現時点では予防すれば避けられるというものではありません」
では、難聴になった時にはどうすればいいのだろうか。