2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年7月4日

 そして、この論説で「今のところ」機密扱いと言っているように、サプライチェーンの明確化努力を続けるのであれば、これはいずれ機密扱いでは無くなり、民間企業は各部品の調達先までも開示しなければならなくなるだろう。米国は中途半端では止まらない。

対策の限界

 決定的な限界は、同盟国や同志国以外の国々、すなわち、経済的威嚇を仕掛ける側の国々のデータが不足していることだ。問題となるべきは同盟国や同志国のサプライチェーンの健全性なので、同盟国や同志国自身がどこから何を調達しているかが分かれば良いということなのだろう。しかし、これが意味するのは、われわれは常に攻撃される側にあり、こちらから攻撃を仕掛けるのは難しいということだ。

 中露にとってのサプライチェーンのチョークポイントは何処に存在しているのか? 彼らが、われわれの同盟国・同志国に依存しているものは必ずやあるだろうし、時宜に応じてそれを「使う」のは、同じ土俵で相撲を取るという点で道徳的には適切ではないかもしれないが、相手の経済的威嚇を「抑止する」上では重要な手段だ。このことが商務省のツールでどこまで分かるのか興味深い。

 この論説が最後に触れているのは、「友達」の間だけでサプライチェーンを形成するということだが、ここにも課題はある。まず、経済的合理性への配慮が少なく、各種物品の調達コストが不可避的に上昇し、各国の国民生活に後ろ向きの影響を与え得る。

 ただでさえ貧富の格差が民主主義システム自体への挑戦になりつつある中で、このような「実験」は可能なのか? 適切なのか? こうした問題への解も示していく必要がある。

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