そうした機会を活用して、中国共産党は国民党への影響力を扶植してきている。一説には、資金が流れているとの報道があり、それが第三党である民衆党の協力を可能にしたとみられている。
そして5月28日、再度民衆党の同調を得て、国民党は立法院の権限拡大法案を通過させた。この法案は、議会改革を名目に立法院の調査権限を拡大し、議会は国家主権に関しても調査権限を得、総統を幾度も立法院に呼びつけることが出来る内容のようだ。
注目すべき若者の行動
中国共産党の狙いは、国民党を梃に台湾の立法院に影響力を拡大し、立法院の権限拡大により立法院の活動を通じて頼清徳総統の国政を混乱させ、機能停止に陥らせ、一つの中国を受け入れる素地を作る戦略であろうと考えられている。台湾への統一工作は、「立法院を舞台に戦わずして台湾独立勢力を降伏させる」ということであろう。
なお、同法案は成立しても、効力発生には総統の署名が必要であったり、憲法裁判所が介入したりする可能性は残っている。また注目すべきは、上記立法院の権限拡大法案の審議の過程で、「青鳥運動」という8万人を超える若者が街に出て反対運動を行ったことである。第三党民衆党には多くの若い世代が党員に加わっているが、それらの若い世代が民衆党幹部の立法院での行動に疑問を抱き始めている。
これは、中国の「灰色戦略」の政治的手段の一つにすぎないが、台湾に対してほど露骨ではないにしろ、日本に対しても「灰色戦略」がなされていることを認識して対処することが重要であろう。