2024年11月24日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年7月5日

 中国は2つの方法を同時に追求する。実際、これら2つの方法は、その累積的な効果が台湾の抑止力と戦闘能力、政治的、社会的、経済的強靭性に打撃を加えることが出来るのであれば、完全に両立する。

 中国が台湾に対し軍事的行動を開始するのを抑止することは、台湾の現状維持とインド太平洋地域の広範な地政学的安定を目指す米国と同盟諸国にとって、戦略上の要である。それら諸国にとっての課題は、「戦争に至らず」、「侵略にも至らず」のままで台湾を屈服させようとする中国の攻撃をいかに阻止するかにある。

 世界の国々は、中国の「灰色戦略」に対抗する措置をとる努力が求められる。そうした努力の対極は全く何もしないことであるが、それは中国の思うつぼである。平和を維持するため、われわれは今後10年間にわたり、より広範な統合抑止を形成することが必要である。

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中国が進める立法院からの切り崩し

 本年1月の総統選挙で民進党の頼清徳総統が選出された後、中国の台湾に対する非軍事の作戦は執拗に続いている。台湾立法院では、民進党の51議席に対し、国民党は1議席多い52議席を有しているだけだが、8議席を有する第三党の民衆党の協力を得て、頼清徳民進党政権の政策運営に制約をかけようとする動きが顕著になってきている。

 2月に台湾立法院の院長(国会議長)を選出する議会プロセスで、国民党は民衆党との連携に成功し、国民党の韓国瑜を立法院院長に、副院長にも国民党の江啓臣を、それぞれ選出することに成功した。

 知られている通り、韓国瑜は高雄市長在任中の2019年に香港にある中国政府の出先機関を訪問して物議を醸し、市長在職のまま20年の総統選挙に国民党から立候補したが、「中国に融和的」と見られて民進党の現職蔡英文に敗退した。その後、高雄市長をリコールされ、住民投票の結果失職したが、1月の立法委員選挙では党の比例代表の名簿1位で当選した人物である。

 3月には国民党副主席の夏立言が北京へ招待され、台湾事務弁公室長宋濤が会談したところ、報道によれば、台湾で汚職調査を名目に台湾の潜水艦建造を巡る調査をさせ、汚職摘発を示唆したとの観測がある。4月には、傅崐萁台湾国民党幹部(前花蓮県長)の訪中を促し、王滬寧共産党中央政治局常務委員が会談した由である。


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