2024年10月5日(土)

田部康喜のTV読本

2024年7月7日

 「エンジェルハース」社は、日本の国際霊柩送還士の先駆けとして社長の伊沢那美(米倉涼子)と会長の柏木史郎(遠藤憲一)が設立した。日本人が海外でテロや災害などに遭って亡くなった遺体を運ぶ。逆に日本で亡くなった外国人の遺体を本国に送る。

 欧米とくに米国では遺体をエンバーミング(防腐処理)する資格もあり、日本に運ばれてくる遺体の状態は悪くない。しかし、一部の国ではこの防腐処理が極めてずさんなことが多く、伊沢(米倉)らのチームは、羽田空港の貨物エリアに届いた遺体の棺を開ける瞬間に緊張を強いられる。

 顔の表情が崩れているばかりではなく、腐敗した遺体からの大量の体液に悩まされる。この遺体をあたかも静謐(せいひつ)な死を迎えたように処理して、遺族のもとに届けるのである。葬儀の日時や時刻に追われて短時間の作業を強いられる過酷な仕事である。

メンバーたちが持つ「死」と「生」の記憶

 遺体の処理のエキスパートが柊秀介(城田優)であり、若手社員が矢野雄也(矢本悠馬)、新人で入社したばかりの社員が高木凛子(松本穂香)らである。

エンジェルハースのメンバーは日々、「死」と「生」に向き合う

 チームのなかには、近親者の「死」と「生」の記憶に縛られて自由になれない者が多い。

 社長の伊沢(米倉)は、自宅に帰って恋人の足立幸人(向井理)の肩にもたれかかって寝てしまう。しかし、その幸人(向井)の姿は幻で、8年前のフェリーの海難事故によって死亡している。しかし、その遺体に遭っていない伊沢はいまも幻影に苦しんでいる。

 新入社員の凛子(松本穂香)は、愛情を注がれた記憶がない母親の塔子(草刈民代)から急に本人が手術をするので、同意書が必要だという連絡を受ける。

 遺体修復のプロフェッショナルの柊(城田)も亡くなった母親との最後に苦い思い出を抱えている。

 そして、彼らが日々向き合っているのが「死」と「生」なのである。エピソード1では、家出同然の形でアジアを放浪した青年・杉原陽平(葉山奨之)が、マニラのギャングの抗争に巻き込まれて死んだという連絡が外務省経由で両親のもとに届く。

 父親の辰彦(杉本哲太)は遺体の引き取りを拒否する。伊沢(米倉)は納得できずに、凛子(松本)を伴って現地に向かう。

 そこで明らかになったのは、陽平(葉山)はギャングの一味ではなかった。それどころか、貧しい人々が暮らす地域に農園を開いて収入を得させるリーダーだった。

 それを邪魔するギャングに殴り殺されたのだった。伊沢が連れ帰った陽平の遺体はチームによって生前のように整えられて帰国した。


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