2024年7月17日(水)

BBC News

2024年7月17日

マックス・マッツァ、BBCニュース

ドナルド・トランプ前米大統領の警備体制が、数週間前に強化されていたことが明らかになった。米警備当局によると、イランが暗殺を計画していることから、強化措置が導入されたという。ペンシルヴェニア州で13日に実際に起きた暗殺未遂と、イランの計画に結びつきはないと考えられているという。

ただし、すでに警備が強化されていたにもかかわらず、トマス・マシュー・クルックス容疑者(20)が約130メートル離れた建物の屋根の上から、前大統領を狙って発砲できたという事態に、警備体制への疑念が再浮上している。

米警備当局関係者によると、現職大統領および大統領経験者の警護を担当するシークレットサービスと、トランプ陣営は、イランによる暗殺計画について知らされ、それに伴い警備が強化された。

情報当局はBBCがアメリカで提携するCBSに対して、今年6月にシークレットサービスがイランからの脅威に対して警備を強化したと話した。攻撃や狙撃手に反撃するためのエージェントや狙撃手を増強し、ドローンやロボット犬を導入するなどしたという。

CBSによると、イランが実施する可能性のある作戦の詳細は、「人的情報源」によって得られた。トランプ前大統領への攻撃に関するイラン系の「おしゃべり」が目立つ形で急増したことから、計画を察知したという。

トランプ前大統領やマイク・ポンペオ前国務長官など複数の前政権関係者については、2020年1月にイラクでイラン革命防衛隊・コッズ部隊のカシム・ソレイマニ司令官をドローン攻撃で殺害して以来、イラン政府による報復攻撃の懸念が続いている。

国連のイラン代表部は、今回の報道について「裏付けがなく悪意に満ちたもの」だと反発する一方、トランプ前大統領は「法廷で起訴され処罰されなくてはならない犯罪者」だと非難した。

米シークレットサービスのアンソニー・グリエルミ報道官は、自分たちも他の政府機関も「脅威になり得る新情報は常に受け取っており、必要に応じて、それに対応してリソースの配置を変えて行動している」と話した。

「特定の脅威の流れについてはコメントできないが、シークレットサービスはさまざまな脅威を真剣に受け止め、しかるべく対応する」

トランプ陣営は、治安に関する内容にはコメントしないとして、シークレットサービスに取材するようBBCに促した。

米国家安全保障会議のエイドリアン・ワトソン報道官は、米治安当局は「もう何年も、トランプ政権関係者に対するイランの脅威を追跡してきた」と述べ、「ソレイマニ殺害への報復をイランが願っていることから生じる脅威であり、私たちはこれを最も優先度の高い国家と国土の安全保障案件と認識している」と話した。

ただし、ペンシルヴェニア州で前大統領を銃撃したクルックス容疑者には、「外国だろうが国内だろうが共犯者や共謀者」との「関連性があったとは特定できていない」とも強調した。

米司法省は2022年の時点で、イラン革命防衛隊の関係者を、トランプ政権の大統領補佐官(国家安全保障問題担当)だったジョン・ボルトン氏の殺害を計画していた罪で起訴したと発表している。同省は当時、ソレイマニ司令官殺害の「報復目的と思われる」と説明していた。

クルックス容疑者はなぜ接近できたのか

シークレットサービスのキンバリー・チートル長官は、前大統領に向けてクルックス容疑者が屋根で銃を構えていた建物の中には当時、現地の警官がいたと認めた。

CBSは、建物の中には現地警察の狙撃手が3人おり、容疑者が屋根に上るのを目にしていたと伝えた。

現地の保安官事務所はBBCの取材に対して、発砲現場の管轄は州警察だと説明した。

州警察報道官はBBCに対して、演説会場を中心とした警備範囲内に30~40人の警官を派遣するなど、シークレットサービスに要請された「すべてのリソース」は提供したと答えた。

ジョー・バイデン米大統領は、なぜ容疑者があそこまで接近できたのか、第三者による調査を指示。連邦議会も、警備の問題を調べている。

(英語記事 Trump security boosted weeks ago over Iran plot to kill him

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cp68yr9we31o


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