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ドナルド・トランプ前米大統領が副大統領候補に選んだ上院議員が、労働党政権下のイギリスは核兵器を保有する初の「真のイスラム主義国」かもしれないと発言したことについて、イギリスのアンジェラ・レイナー副首相は16日、イギリスはそのような国ではないと一蹴した。
トランプ前大統領は15日、米共和党の全国大会で11月の大統領選に向けた候補に正式指名された。副大統領候補には、J・D・ヴァンス上院議員(39、オハイオ州選出)が選ばれた。
ヴァンス副大統領候補の発言は先週、首都ワシントンで開かれた国民保守主義の会議でのもの。
ヴァンス議員はこの会議での演説で、自分はイギリスを「叩いている 」のだと語り、友人と 「核兵器を保有する最初の真のイスラム主義国はどこか」について話し合ったと述べた。「イランかもしれないし、パキスタンも数には入るかもしれない。それから私たちは、実際のところ、労働党が政権を取ったイギリスだろうと話した」と冗談を飛ばした。
アメリカ政界の右派関係者の一部では、イスラム教徒の人口が少数を占める一部の欧州の国で、イスラム主義者が力を増しているという主張が、よく飛び交っている。アメリカの右派関係者はイギリスについても、そうした指摘を繰り返している。
イギリスが「イスラム主義の国」になるというヴァンス氏の発言は、労働党政権の移民政策に対する直接的な批判にあたる。ヴァンス氏はまた、野党になった保守党が「これに対処しなければならない」とも述べた。
ヴァンス氏はこの会議での演説で、さらに移民を攻撃する発言を重ねた。
「アメリカの民主主義にとっての本当の脅威は、アメリカの有権者が移民を減らすよう投票し続けているのに、政治家たちが移民を増やすよう報い続けていることだ」
さらに、「私は昨年ロンドンに行ったが、ロンドンはあまりいい状態ではなかった」と述べ、住宅価格の高騰と移民の多さに言及し、両者の関連性を指摘した。
これに対しレイナー副首相は、英ITVの番組で、ヴァンス氏は「過去にかなりきわどいことをたくさん」発言していたが、ヴァンス氏のイギリス評は自分の認識と一致していないと反論した。
また、 「労働党が選挙で成功したことをとても誇りに思う」、「私たちはイギリスを代表し、国際的な同盟国とも協力しながら統治することに関心を持っている」と語った。
その上で、11月の大統領選でトランプ前大統領が勝利した際には、前大統領とヴァンス氏に会うことを「楽しみにしている」と付け加えた。
英財務省のジェイムズ・マリー国庫担当官も、ヴァンス氏の発言を批判した。
マリー氏は英スカイニュースに出演した際、「正直言って、ヴァンス氏があの発言で何を言いたかったのかわからない。つまり、イギリスは多様性を非常に誇りに思っている」と述べた。
「新政権が誕生し、労働党政権が国家安全保障と経済成長を重視して取り組んでいることを誇りに思う。現在地ははっきりしている」
「あのコメントがどのような意味を持つのか、私にはよくわからない」
保守党のアンドリュー・ボウイ影の退役軍人相は、労働党が「イスラム主義国」を作ろうとしているという主張には「絶対に」同意できないと述べた。
ボウイ氏はタイムズ・ラジオで 「私は労働党と多くの問題で基本的に意見が合わないが、率直に言って(ヴァンス氏の)意見には賛成できない」。「率直に言って、労働党の同僚を侮辱していると思う」と語った。
英労働党政権とトランプ氏陣営
労働党政権で外相となったデイヴィッド・ラミー氏はここ数カ月、ヴァンス氏を含む、トランプ前大統領の盟友らと強い関係を築こうと意識的に努力してきた。
ラミー氏は5月の訪米親善使節団で、トランプ前大統領の盟友数人と共にヴァンス氏に会い、同氏を「友人」と評した。
ワシントンで行われた右派系のハドソン研究所での講演で、ラミー氏は、ヴァンス氏が「欧州には問題があり、国防費の増額で解決する必要があると言うのは正しい」と述べた。
さらに、トランプ前大統領は北大西洋条約機構(NATO)に関して「しばしば誤解されている」と指摘。自分は「アメリカ・ファーストを推進するアジェンダを理解している」とし、トランプ政権と「共通の大義」を見出すだろうと述べた。
しかし、ヴァンス氏が副大統領候補となったことで、トランプ候補がホワイトハウスに戻った場合、英労働党新政権に難題を突きつける可能性がある。
トランプ前大統領が選んだ副大統領候補は、共和党の中で特に孤立主義的な側面の強い議員の一人。
元トランプ批判者で、現在は先陣を切ってトランプ氏を応援しているヴァンス氏は、ウクライナ支援に反対している。一方、キア・スターマー英首相は、ウクライナ支援に30億ポンドを「必要な限り」費やすことを約束している。
ヴァンス氏はまた、欧州が外交政策においてアメリカに依存しすぎていると批判しており、米英関係を緊張させる可能性がある。
だがヴァンス氏の最近の介入をよそに、労働党はトランプ陣営との外交努力は実を結び始めていると考えている。
労働党の情報筋によると、トランプ氏の暗殺未遂事件の翌日の14日、スターマー首相はトランプ氏と話した。2人が会話したのはこれが初めてだという。
ジョンソン元首相がトランプ氏と面会
こうしたなか、イギリスのボリス・ジョンソン元首相は16日、ミルウォーキーで開催されている共和党全国大会の傍らで、トランプ前大統領と会談した。
ジョンソン氏はソーシャルメディアに、「私たちはウクライナについて話し合った。彼がウクライナを支援し、民主主義を守るために強力かつ果断に行動することは間違いない」と投稿した。
(追加取材:マイク・ウェンドリング)
(英語記事 Rayner dismisses Trump running mate 'Islamist UK' claim)