2024年7月17日(水)

BBC News

2024年7月17日

米富豪イーロン・マスク氏は16日、所有する宇宙開発企業「スペースX」とソーシャルメディア「X」(旧ツイッター)の本社を、米カリフォルニア州からテキサス州に移転させるつもりだと述べた。

マスク氏は移転の理由として、カリフォルニア州の新しいジェンダー・アイデンティティー(性自認)法に反対していることを挙げた。この州法では、学校が職員に、生徒の性自認に関する情報を、たとえ親に対してであっても開示するよう要求することを禁止する。

マスク氏はXで、「我慢の限界だ」と書いた。

同氏は2001年にも、新型コロナウイルスのロックダウンに耐えられないとして、所有する電気自動車(EV)メーカー「テスラ」の本社をテキサス州に移している。

それ以降、マスク氏はアメリカ政治に積極的にかかわるようになった。

先週末には、ドナルド・トランプ前大統領を正式に支持すると発表。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは16日、マスク氏が毎月4500万ドル(約71億円)をトランプ陣営に寄付するつもりだと報じた。マスク氏はこれに、インターネットミームの「偽物のヌー」の写真で反応した。

子どもの性自認と政治

アメリカでは、学校は子どもの性自認について親に何を伝えるべきかが大きな議論になっている。

性的少数者(LGBTQ)の権利活動家らは、生徒にはプライバシーの権利があると主張する。一方、親には自分の子供に何が起こっているかを知る権利があると主張する人もいる。

トランスジェンダーの娘を持つマスク氏は以前、「トランスの人々を支持する」と発言した一方で、人々が自分の代名詞を選び、表明する風潮を、「美的感覚の悪夢」と表現していた

昨年には、トランスジェンダー医療について、「同意年齢未満の子どもたちに深刻で不可逆的な変化をもたらす」とし、犯罪とするよう働きかけると述べた。

カリフォルニア州での新法制定を受け、マスク氏はXで、「家族も企業も攻撃するこの州法と、それに先立つ多くの法律を受け、スペースXは本社をカリフォルニア州ホーソンからテキサス州スターベースに移転することになった」と発表。さらに、「Xはオースティンに移転する」と表明した。

また、これまでにもこの法案に反対してきたと語った。

Xをオースティンに移転する決断を説明する中で、マスク氏はサンフランシスコの現状を批判。「本社ビルに出入りするためだけに暴力的な麻薬中毒者のギャングをかわすのはもうたくさんだ」と述べた。

カリフォルニア州のギャヴィン・ニューサム知事は、Xで、マスク氏の決定に対する批判を繰り広げた。

ニューサム氏は、2022年にトランプ前大統領がマスク氏を批判している投稿のスクリーンショットと共に、「あなたはひざまずいた」と投稿した。

州知事の報道官を務めるブランドン・リチャーズ氏は、この州法は「親の重要な役割を守りつつ、子どもたちの安全を守る」ものだと述べた。

リチャーズ報道官はAP通信に対し、「政治家や学校職員が家庭の問題に不適切に介入したり、家族が深く個人的な会話をするかどうか、いつ、どのようにするかを管理しようとしたりすることを防ぎ、子どもと親の関係を守るものだ」と説明した。

アメリカでは歴史的に、高賃金の雇用をもたらす企業本社を誘致するため、各州が積極的に競争してきた。

マスク氏自身は現在、所得税のないテキサス州の住民だ。

カリフォルニア州の記録によると、スペースXは同州で5000人以上の従業員を雇用している。一方で、テキサスにも大きな拠点を構えている。

マスク氏の発言を受け、テキサス州のグレッグ・アボット知事は、「これでテキサスは宇宙開発のリーダーとしての地位を固めた」と述べた。

スペースXもXも、本社移転の決定がカリフォルニア州での人員整理につながるかどうかについてのコメント要請には応じなかった。

(英語記事 Musk to move SpaceX and X HQ over gender-identity law

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/crgre4x497eo


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