2024年8月21日(水)

バイデンのアメリカ

2024年7月20日

 さらに翌17日、バイデン氏はそのままラスベガスにとどまり、ヒスパニック系全国組織年次総会でも選挙演説を予定していたが、直前になって、新型コロナウイルス感染が発覚したため、急遽キャンセルとなった。

 体調を整えるため、今後1~2週間程度は、政治スケジュールの再調整を余儀なくされ、再び同氏の「高齢不安」を駆り立てることにもなりかねない。

惨敗で民主主義崩壊の懸念も

 バイデン氏が強気の姿勢を崩さない背景のひとつとされるのが、世論調査動向だ。

 TV討論会後、CBSテレビ、FOX News、NBCテレビが有権者を対象に実施した調査によると、トランプ氏がいずれも数パーセント差でリードしているものの、誤差の範囲内にとどまっており、バイデン支持率の目立った低落はみられない。

 また、銃撃事件以来、トランプ支持が一気に高まるとの事前予想もあったが、FOX NEWSが事件後の去る16日に公表したバージニア州有権者を対象とした調査結果によると、バイデン氏に対する支持は今年1月実施時に比較し、42%から36%に落ちたものの、トランプ支持率は1月時と変わらず39%で変化はみられなかった。

 FOX NEWSは、接戦州のひとつジョージア州でも16日、同様調査を行ったが、トランプ氏47%、バイデン支持44%で、トランプ氏が僅差でリードを維持しているものの、銃撃事件以後、トランプ氏が支持率をとくに伸ばした兆候はうかがえない。

 撤退要求に踏み切った民主党議員が、今のところ下院23人、上院1人にとどまっていることも、バイデン再選委幹部が撤退を「時期尚早」と判断する根拠のひとつになっているとの見方もある。 

 しかし、かりにこのまま、バイデン氏が8月党大会で民主党候補として最終的に指名された場合でも、民主党にとって依然最大の問題は、本選で果たして、彼がトランプ氏と対等に戦えるのかという不安だ。民主党内では、次第に悲観的見方が広がりつつあり、大統領選での「惨敗」説まで米議会内でとりざたされている。

 さらに、大統領選だけでなく、バイデン氏が踏みとどまり続けることで、同時に行われる議会選挙でも苦戦を強いられることを懸念する声が上がり始めている。

 最近までの議会選挙の見通しについては、上院、下院共に共和党がわずかながらリードしているものの、依然予断を許さない状況が続いてきた。

 しかし、民主党が、来月の党大会で候補差し替えに踏み切れなかった場合、最終的に下院での多数奪回はおろか、これまでかろうじて多数を維持してきた上院も共和党側に明け渡す可能性まで指摘されている。

 米政界で、一つの政党がホワイトハウスとともに上下両院で過半数を制する状況は「トライフェクタ(trifecta)」として知られるが、まさにそれが実現するばかりか、トランプ次期政権が誕生した場合、すでに最高裁まで共和党系判事多数で固めているため、民主主義の歯止めがなくなり、「トランプ独裁体制」への道を開くことにもなりかねない。


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