2024年7月29日(月)

インドから見た世界のリアル

2024年7月29日

 当時のドイツでは不真面目な人間を重視した。これらは中級、下級の普通程度の幹部として、命令されたことだけ行い、余計なことをしない人材とみなされたからだ。そして、知性がなくて真面目な人間は、不要とされたのである。

 日本では「愚直」という言葉がよいことのように使われるので、少し意外に思うかもしれない。しかし、第1次世界大戦では、機関銃で全滅してしまうとわかっていても繰り返し突撃命令を実行する、真面目なだけの指揮官たちがいた。そのような指揮官の下では、犠牲が増えるだけで戦争には勝てない、と考えられたのであろう。

 この分類法の特徴は、徹底的な頭脳派軍隊を重視していることである。そして、当時のドイツの厳しい経済状況と、強い復讐心の中で、軍は、知性のある人材を獲得し易かった。

 この知性のある人材は、既存の戦い方を継続する代わりに、まったく新しい戦い方を採用した。大量の戦車を集中運用することにし、通信機で航空機や火砲と連携させた。歩兵も自動車化して戦車に随伴し、連携し合うようにしたのである。

 そして、当時、国際的に孤立していたソ連と秘密協定を結び、ソ連国内に「農業用トラクター」として戦車を大量に運び込み、新しい戦い方に基づく軍隊を、秘密裏に研究し、訓練し、作り上げていった。さらに軍用機も、中立国のスウェーデンなどで、民間機として開発した。

 最終的にナチスが政権を担った時、そこには、新しい軍隊があった。ドイツは徴兵を開始し、軍隊は300万人へと一極に拡大し、もともといた10万人の軍人たちがその上層部になっていった。こうして、ドイツは20年間で、他のヨーロッパ諸国を圧倒する軍隊を秘密裏に作り上げてしまったのである。

 実は、同じことは日本についてもいえる。日本も、巨大でお金もかかる戦艦ではなく、空母を集中運用して、航空機で軍艦を沈める新しい戦術を採用し、実際に真珠湾を奇襲した。その時点では、日本も、優れた戦術を採用した国であった。当時、陸海軍の大学は、帝国大学(例えば今の東京大学など)に勝るともいわれ、優れた人材を集めていることで知られていた。

実際に勝ったのはアメリカの物量をもたらす技術

 しかし、ドイツと日本は、本当の意味で、世界最強の軍隊を作ったといえるだろうか。第2次世界大戦に最終的に勝利したのはアメリカだ。ドイツと日本ではない。

 アメリカはどのようにして勝ったのだろうか。それは圧倒的な物量、それをもたらすさまざまな施策であった。

 ドイツや日本が、新しい戦術を採用して、各国の軍隊を破った時、アメリカは、自らも、その戦い方を採用することに決めた。ただ、そこにはアメリカ独自の側面もあった。

 それは、大量生産することを重視し、規模が大きいことであった。当時のドイツは、エリート部隊は自動車化していたが、ドイツ軍全体を自動車化するには至らず、多くの部隊は、まだ徒歩や馬で移動していた。

 しかし、アメリカは違う。自動車化が素晴らしいアイデアだと理解してからは、大量の自動車を生産して、すべての部隊を自動車化してしまった。自動車の生産能力が高かったからできた、というだけではない。当時のアメリカはすでに自動車化社会で、運転免許を持った人が多かった。だから、運転手にも困らなかったのである。

 アメリカは戦車の大量配備にも成功し、ドイツ以上に多くの戦車を生産、配備した。だから、戦場によっては、ドイツの戦車は5倍の数のアメリカ戦車と戦った。


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