2024年8月2日(金)

教養としての中東情勢

2024年8月2日

 イランに対しては、イスラエルに手を出したり、核開発をこれ以上進めたりすれば、いつでも攻撃できることを警告するため。米国に対しては、ハマスの壊滅なしにはガザ戦争の停戦協議に応じられないことをあらためて突き付けるためだろう。

 暗殺でバイデン大統領の停戦提案が実現するのは当面困難になったとみられているが、バイデン氏や民主党の次期大統領候補ハリス副大統領はこのほど訪米したネタニヤフ氏に早期停戦を強く要求していた。たが、ネタニヤフ氏が暗殺を通して回答したのは「停戦協議つぶし」ということだ。

退路を断ったバイデンはどう動くか

 ネタニヤフ氏には3つ目の狙いもあるのではないか。それはイランを巻き込んだ戦争に拡大し、そこに米国を引きずり込むことだろう。

 米国をイスラエルの軍事行動にがんじがらめにして支援させることだ。ネタニヤフ氏が米議会演説で米国との連帯、一体化を強調した真意がここにある。

 暗殺の直前、イスラエル軍はレバノンの首都ベイルートを空爆し、ヒズボラの最高幹部シュクル司令官を殺害した。バイデン政権が中東の緊張を緩和させようと尽力すればするほど、ネタニヤフ政権がぶち壊しにかかる構図だ。

 イランが報復行動に出た時、再選のくびきから脱したバイデン氏がどう腹をくくるのか、中東は重大な岐路に立たされている。

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