数年前、ある難関校で「どうして月がついてくるのか」というテーマの入試問題が出されたことがあります。確かに、夜道を歩きながら月を眺めていると、どこまでも月がついてくるように感じますが、それは月が地球から遠くにあるために起こる目の錯覚です。
この問題は人と物体の距離と視野について問うていますが、このような問題に出合ったときに「そうそう、お月様ってついてくるよね」という実感があるかないかが、正解への糸口を見つけるための非常に大きな差になります。
「感覚の記憶」が理系力には欠かせない
親子で夜空を見上げるだけでも、雲の流れを追ってみるだけでも、そのときに子どもが感じた「へ~」「きれいだな」「不思議だな」という感覚が、子どもの中に経験として残っていきます。
それは、植物、生物、天文などの自然分野に限りません。すべり台から泥団子を落とすのと、紙を落とすのでは、落ち方がぜんぜん違いますね。「軽いものを落とすとフワフワしてなかなか地面に落ちないんだな」という感覚を知っていると、高学年になって物理的な勉強が始まったときに、「あのことか!」と、経験と知識がつながります。
小さいうちはわからなくても、本格的な勉強が必要になったときにつながれば儲けものです。「感覚の記憶」があればあるほど、とくに理系の勉強では後につながっていきます。