重量、温度、質感の豊かな体験を
親御さんに実践してほしいのは、いろいろなものをお子さんに触らせる経験を増やすということです。難しく考えず、家にある物でもけっこうです。子どもからすると、お父さんの時計は手にズシッとくるでしょう。辞書などの分厚い書籍もかなりのインパクトがあると思います。めったに触ることなどできない金の延べ棒を、持ち上げることができる地方の郷土館もあると聞きます。
手に持って「重っ!」「めっちゃ軽い」とびっくりするような体験をすると、「これってあれより重いかな」というふうに、比べる楽しみが生まれます。
真夏の公園のベンチに座ろうとしたら、木製の座面は大丈夫だけど、鉄製の背もたれが熱すぎて思わず「熱っ!」と叫んでしまったとします。そのときは「なぜ?」「びっくりしたな~」で終わっても、大きくなって熱の伝わり方を学んだとき、素材によって温度が違うことがわかり、やがてその謎は解明されるでしょう。
スチール缶とアルミ缶では、同じ大きさでも重さが違います。身の回りのいろんな物体に触れてみることで、経験とともに「感覚の記憶」がどんどん蓄積されていくのです。
1回目の記事では、数の「量感」についてお話ししましたが、ここでお伝えした「感覚の記憶」も、理系の力を育てるための重要な要素になります。
お子さんがまだ小さいという方は、感覚に訴えかけるような体験をたくさんさせていきましょう。お子さんがすでに就学している場合も、もう遅いということはありません。親子で楽しみながら機会を増やしていってほしいと思います。