民主党の抱える大きな問題は、リベラルな大都市部に居住する中核的支持者のみに依拠しては選挙に勝てないため、穏健な立場を取る人々の支持も確保せねばならないにも関わらず、そのような人々に対する寛容度が低い人が多く存在することである。
大統領選へ気がかりなノーラベルズの存在
24年大統領選挙では、バイデンとハリスが正副大統領候補となって再選を目指すことがほぼ確実視されている。今日、バイデンへの対抗馬としてある程度名前が知られている人物は反ワクチン活動家のロバート・ケネディJr.だけである。
そして各種世論調査でケネディが25%ほどの支持を集めているため、ケネディが勝利するという番狂わせが起こる可能性があると指摘する論者もいる。だが、ケネディを支持するとしている人の多くは、バイデンに対する不満があることを示すために、バイデン以外の候補だというだけの理由でケネディへの支持を表明している可能性が高い。ケネディのような左派的立場に共感するという左派のマグマが存在するのは事実だとしても、それを過大評価するのは妥当でない。
むしろ民主党にとってより大きな脅威となるのは、マンチンの動向である。マンチンは先ほど指摘したシネマと並んで民主党が左派的傾向を強めることに反発を示してきた。そして、今日の米国において、民主党の左派的スタンスを嫌う一方で、トランプが大統領となるのも好まない人々が第三の政党を結成し、マンチンに大統領選挙への出馬を促している。このような動きは、ノーラベルズと呼ばれている。
米国では長らく二大政党政治が定着しており、二大政党に有利な制度が多く存在するため、第三の政党が勝利するとは考えにくい。ただし世論調査では二大政党以外の政党が必要だと回答する人々の割合が歴史的に最も高くなっている。このような中で、マンチンらを中心に民主党を割る形で第三政党結成の動きが出てくると、結果的に民主党の足が引っ張られる可能性もある。
24年大統領選挙は、バイデン対トランプとなる可能性が高いと指摘されているが、このような第三党結成の動きが選挙結果を左右する可能性も存在しているのである。