ブリティッシュ・コロンビア州では、年間20万ヘクタールもの原生林を伐採して、木質ペレット生産に力を入れている。原料は間伐材や林地残材(根株や枝、梢など)のほか、製材後の端材や枯れた木だと工場主らは主張しているが、現実には原生林を伐採した木を丸ごとチップにする分も少なくないとされる。またペレット工場周辺では、騒音や粉塵、煤煙による健康被害を訴える住民が増えて訴訟沙汰も起こしている。
なお生産された木質ペレットは世界中に輸出されるが、日本もその一つだ。カナダからは生産量の半分を超える約158万トン、米国からは約126万トン(いずれも2023年)が日本に運ばれ、バイオマス発電所を稼働させている。
日本の森のラストベルト
海の向こうの話で終わらない。日本でも、森のラストベルトは確実に広がっている。森林を多く抱える地方の自治体は、農林業の衰退によって過疎にあえいでいるからだ。
若者は進学や就職を機に都市に出ていく。山村なのに林業従事者はほとんどいず、地場の小さな製材所も姿を消した。
地方創生を掲げて設けられた観光施設なども、閑古鳥が鳴き、廃墟になったものも少なくない。集落でも空き家が増え、残された者は高齢者ばかりだ。
そんな放置された森林地帯に、近年は高性能林業機械で山を丸ごと伐っている業者が入って来た。伐るのは、戦後植えて営々と育ててきたスギやヒノキ、カラマツなどの人工林だ。ようやく使える太さまで育ったというのに、森林所有者は町に移り住んだことで森林に興味を失い、木材価格も下落して林業を営む意欲を喪失していた。
そんな山を安く買いたたいて伐る、あるいは許可も得ずに他人の山を勝手に伐ってしまうのだ。補助金で山に道を入れ、補助金で購入した巨大な林業機械で、野放図な伐採を繰り広げている。
山肌は重機のキャタピラで攪乱され、草も生えなくなる。しかも伐採跡地の再造林はあまり行われていない。