2022年7月7日(木)

安保激変

2013年12月31日

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小谷哲男 (こたに・てつお)

明海大学外国語学部教授

日本国際問題研究所主任研究員を兼任。専門は日本の外交・安全保障、日米同盟、インド太平洋の国際関係。主な共著に『アジアの国際関係―移行期の地域秩序』(春風社)など。
 

 「中韓の顔色をうかがうのは国益にならない」と今回の参拝を支持する声もあるが、中韓の強硬姿勢を改めさせるには、自制的な対応を続けることによって国際世論を味方につけなければならない。国際世論は安倍首相のナショナリスト的な側面に懸念を持っているため、中韓は安倍首相を「右翼の軍国主義者」と批判して国際世論を誘導しようとしていた。だが、安倍政権が中韓の強硬姿勢に自制的に対処しているのをみて、国際世論は理不尽な要求を日本に突きつける中国や韓国に批判的な目を向け始めていた。

 今回の靖国参拝で国際世論は日本も中韓も「どっちもどっち」という印象を持ったことだろう。しかし、国際世論は依然として「アベノミクス」に強い期待を持っている。安倍首相は、構造改革を通じた日本経済の再生によって、国際世論の信頼を取り戻すべきだ。歴史認識については、終戦70周年となる2015年に未来志向の「安倍談話」を出して一区切りをつければいい。今回の靖国参拝と同時に発表した「不戦の誓い」がその土台となるだろう。

中韓それぞれへの対応策

 では、中韓そしてアメリカとの関係はどのように立て直すべきか。

 まず、中国は尖閣諸島の領有権に関して、韓国は慰安婦問題に関して、日本が譲歩することを求めている。日本としては、中韓の理不尽な要求には毅然と対処しつつも、特定の問題が二国間関係全体を悪化させている状況を改善させなければならない。

 実は、参拝直前に中韓との関係では変化の兆しが見え始めていた。中国では習近平体制が国内基盤を固めつつあり、韓国では朴槿恵大統領の側近から韓国の孤立を懸念する声が水面下で漏れ聞こるようになっていたからだ。

 中国は現在権力闘争の過渡期にある。習近平指導部による周永康・前政治局常務委員を中心とする保守派の粛正が行われている。周永康氏の側近が1人また1人と逮捕され、周氏自身もすでに軟禁状態にあるというのが大方の見方だ。

 習近平体制が権力基盤を固めれば鄧小平時代に匹敵する強い指導部となり、国内の改革に乗り出す可能性が高い。そして、国内の改革を断行するためには、尖閣をめぐる対立を相対化し、日中関係を安定させることが必要となる。実際、靖国参拝後も習近平指導部は反日デモを認めていない。

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