2024年11月22日(金)

未来を拓く貧困対策

2024年8月30日

安定財源の確保

 支援金制度の第1の特徴は、制度を創設したことで安定した財源を確保できることである。「改善に向けた大きな一歩になる」(山口慎太郎東京大学大学院教授、NHK、2024年6月5日)、「安定財源の確保を歓迎」(藤森克彦日本福祉大学福祉経営学部教授、東洋経済、2024年3月30日)などの声が代表的なものである。

 日本では、高齢期には医療・年金・介護という強固な社会保険制度によって生活が保障されている。保険料の高さや、年金額の少なさなどの不満はよく聞かれるものの、世界的にみても、これだけの社会保障サービスを整備している国は多くない。

 一方で、子育て期は支出が増えるにも関わらず公的支援の規模は小さく、「税金や保険料を取られるばかり」という現状があった(表1)。安定財源を得たことで、若い人たちに対するサービスの拡充が期待できる。世代による不公平感も、一定程度、解消される効果も期待できるだろう。

不合理な制度設計

 支援金制度の第2の特徴は、制度設計に社会保険を採用したことによって生じた不合理である。この点については、「無理筋の財源調達方法」(高端正幸埼玉大学人文社会科学研究科准教授、都市問題、2024年6月号)、「都合のよい財布」(谷口智明第一生命経済研究所総合調査部研究理事、2024年3月1日)との批判がある。

 そもそも、民間保険を含む社会保険は、被保険者が共通して抱えるリスクをカバーする仕組みである。医療保険なら病気やケガ、介護保険なら要介護状態、雇用保険なら失業などのリスクに備えて保険料を拠出する。そして、リスクが顕在化すれば、一定の要件のもとにサービスが提供される。保険料を支払う代わりに、万が一の保障を受ける権利を得る訳である。

 一方で、社会保障制度には、これとは別にすべての国民を対象としたものがある。児童手当や生活保護制度が代表的なもので、それぞれ社会手当、公的扶助と呼ばれる。保険料の拠出を要件としない点で、社会保険と区別される。

 一般に、社会保険は保険料で、社会手当や公的扶助は税でその財源を確保している。社会保険とは「万が一に備えて保険に加入する」もので、社会手当・公的扶助は「国民の生活を保障する」ものだからである。これをごちゃまぜにしてしまうと、負担と給付の関係が曖昧になる。 


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