少子化対策の特効薬とするためには
支援制度の二つの側面をみてきたが、コインの表裏のように、よい面と悪い面がある。よい面は、財政的な裏づけをもとに、思い切った少子化対策ができる可能性である。
社会保障給付費の推移をみると、年金や医療などの高齢者向けの社会保障給付の増加は驚くばかりである(表2)。
支援金制度は、年金や医療と同じく、必要性に応じて財政規模を増やしていくことになるだろう。高齢者と若者の社会保障給付に関する不均衡を解消され、少子化対策が進むかもしない。
悪い面についても触れておこう。無秩序な財政規模の拡大である。
年金や医療から明らかなように、国が統制する社会保障の支出は膨らみやすい。年金や医療の削減は高齢者から強い反発がある一方で、社会保険料の増加は1年単位でみればそれほど大きな変化はない。財務省が厳しく目を光らせても、限界がある。結果として、財政は膨らみ続けている。
子育て支援についても、いざ制度がはじまれば「支援策の拡充を」「新しいサービスの提供を」という要望合戦が繰り広げられることは想像に難くない。口当たりのよい政策が気軽に実施できるなら、ためらう政治家は少ないだろう。
政策担当者だって、新しい事業を立ち上げる仕事はやりたいに決まっている。そのとき、財政の膨張を押しとどめるようなシステムは支援金制度には盛り込まれていない。
政治家や政策担当者にとって”打ち出の小槌”となる支援金制度は、果たして少子化対策の特効薬になりうるのか。
筆者も、期待と困惑をないまぜにしなら、その動向を見守っている。