今回紹介させていただいた産地のJAは、一部のタレント職員に依存しており、優秀な営農指導員ほど、金融や共済への異動、他業種へ転職するケースも多い傾向があるようだ。そのため、JA内で長年蓄積された営農指導のノウハウが継承できない恐れがある。都道府県の研究者や普及指導員のOBなどが定年後、JA職員になり、カバーしている地域もある。
再考すべき日本でのJAへの批判
JA北新潟の旧JAにいがた岩船管内の事例に見たように、ここ数年JAが組織を挙げてDXに熱心なことは、従来紙媒体に依存してきた業務体制への危機感の表れとして評価して良いと思う。
昨年、バングラデシュで開催された研修でも「日本のJAは金融や共済まで幅広い活動をしており、農民の生活を支えている」と、日本ではとかく批判的に指摘される活動について高評価であった。私たちもJAを批判し、負の面だけ強調するのではなく、プラスの面にも目を向けた方がいい。物事には常に光と影がある。
よく、「JAに出荷していては食べていけない」との批判も耳にする。しかし、ある県の大規模農家やネット販売に熱心な中規模農家もJA出荷の比率が依然として大きく、リスク分散している。
直接販売の場合、自分で梱包し、出荷するなどの手間がかかるので、直販だけでは全量売り切るのは不可能である。その事実は農業関係者ではない人には意外と知られていない。
今年2月、訪問したラオスでも農家個々の力が弱く、「ミドルマン」と呼ばれるバイヤーに買いたたかれることが多いと農家から聞いた。「農家が組織を作り、価格交渉できると良い」と話していたが、JAはまさにそのことを実践している。
来日した海外の研修員は数週間という短い期間で日本の農業を見たり、海外では数時間で日本の農業の説明を受けたりしているので、JAを過度に高評価していると感じる日本人もいるかもしれない。ただし、筆者の長年の経験から、日本の農業の紹介のなかで、最も反応がある一つがJAであることは紛れもない事実であると感じている。
海外から評価されているJAはどの点が良いのか、日本人である私たちも知り、冷静にJAを評価すべきだ。JAが農業界において重要な存在であることを否定する人はいないであろう。
農業関係者がJAのかかえる課題を解決できるように見守り、時には建設的な助言をすることが、日本の農業の発展につながると感じている。