2024年9月6日(金)

お花畑の農業論にモノ申す

2024年9月6日

 たとえば、中條さんが中心となり、県の研究機関とも連携し、連作障害による病害の克服にも取り組んでいる。土壌病害は深刻な被害をもたらしたが、土壌消毒のための新技術を導入。病害発生率を低下させ、収量・品質の向上につなげた。

出荷する「里むすめ」をチェックする中條氏(左)と生産者(中條氏提供)

 最近では、「里むすめフェス2023」というイベントを通じて地域の魅力を発信し、地産地消の推進にも貢献している。このイベントでは、地域の特産品を活用した商品を提供すると共に、レシピコンテストなど多様なコンテンツを準備。地域内外から幅広い層の多くの来場者を集めることを成功させた。また、中條さんは、里浦の海外輸出の商談まで自らが行っている。

 つまり中條さんは、生産から販売まで一貫して手掛けるいわば、「なると金時」を支えるJA里浦の幹部かつ看板職員であり、「オールランドプレーヤー」でもある。

 前述の台湾での研修で、ある東南アジアの研修員は「自国の協同組合は生産が中心で、販売まで関わっている組合は少ない。販売まで強く関与するのは驚きだ」と研修後にわざわざ感想を伝えにきてくれた。

 実は、筆者は、このような「オールラウンドプレーヤー」に、愛媛県今治市の柑橘産地、山梨県笛吹市の桃産地でも出会っている。全国有数の産地には生産から販売まで知り尽くした「オールラウンドプレーヤー」のJA職員が多く存在し、産地を支える。これは、世界から驚きと羨望の眼差しが向けられているのだ。

「一人も取り残さず」先進技術を導入

 ITなどの最新機器を活用したスマート農業をJA職員が支援し、効率的な経営も進めている。新潟県のJA北新潟の旧JAにいがた岩船出身の山田薫さんは、JA全農が普及を進める栽培管理支援システム「ザルビオフィールドマネージャー(ドイツのBASF社が開発。以下、「ザルビオ」)」を使用して営農指導の効率化を図っている。

 ザルビオは、衛星画像を人工知能(AI)で分析し、生育状況や病害の発生予測、天気予報などを基にした農薬・肥料の散布日時の推奨などを行う。圃場(ほじょう)の衛生画像はほぼ毎日撮影・自動更新され、エリアごとの作物生育状況や病害発生リスクも表示される。

 ザルビオを導入したきっかけについて山田さんは「管内有数の篤農家が経験的に圃場の肥沃度の差異を把握していたのだが、それがザルビオ画像分析したものと一致していた」と話す。


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