2024年10月7日(月)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2024年10月7日

ノルウェーはかつてクロマグロ資源をつぶした

 筆者が1990年にサバやシシャモの買付で初めてノルウェーを訪問してから30年以上が経過しています。その当時から、そして現在に至るまで何人もの現地の方々から、昔はクロマグロがたくさん獲れたと聞いてきました。

ノルウェーのクロマグロは、尾も大きい(筆者提供)

 歴史をたどると、ノルウェーは1950年代から60年代にかけ、年間で多い時には1万5000トンものクロマグロを漁獲していました。50年から70年にかけての年間漁獲量の平均は5430トン。ノルウェーには当時7月から10月にかけて4歳から20歳の「親魚」が回遊していました。

 資源管理ができていなかった当時は、魚が獲れるのでマグロを狙う漁船が増えていきました。49年に43隻であったマグロ漁船は、50年には200隻にも達しました。

 次に獲り放題による世界共通の悲劇が訪れました。漁船と漁業者が増えると漁獲量は一時的に伸びました。しかしこれは魚が増えたからでは決してありません。

 60年代の終わりには、ほぼ獲れなくなり、そして85年には乱獲で資源が崩壊し漁獲停止となりました。原因については「乱獲(overfishing)」と言われています。

 我が国のように「乱獲」という本質的な原因を避け、「環境の変化」などに責任転嫁するようなことはありません。ですから、資源管理計画がまともなものになって回復したのです。

原因はノルウェーだけではなかった

 下の図は大西洋クロマグロの分布海域(水色)と産卵場(オレンジ色)を示しています。マグロ資源はメキシコ側と地中海で産卵する資源の2つに分かれていると考えられています。右の地中海で生まれたマグロの内、親魚がエサを求めてノルウェー海域に移動すると捉えられています。

クロマグロの分布海域と産卵場(IMR資料)

 乱獲は、ノルウェー海域だけでなく、産卵場のある地中海でも起こっていました。産卵場、そして産卵を終えて回遊するクロマグロを「数量制限」なしで漁獲を続ければ、資源が崩壊していくのは自明です。


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