2024年10月7日(月)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2024年10月7日

太平洋と大西洋クロマグロの差

 どちらも、かつて乱獲で資源をつぶしていたところから徐々に回復してきています。しかしながら、その回復度合いには差があります。

 太平洋では、25年に計画されている枠は各国合計で1万6994トンです。一方で大西洋の枠は4万570トンと2.4倍です。海の中のマグロは卵を産める大型が多いので、将来も明るいです。

 両海域とも「生けす」で活かしたまま成長させる畜養が盛んです。しかしながら大西洋では巨大な成魚のクロマグロを夏に獲って短期間で使っているのに対して、日本の場合は大半が30センチ程度以上の未成魚(大半は500g~2キロ前後)を数年かけて育てます。このため経済効率は大きく違います。

漁獲枠交渉時の各国と日本の温度差

 前述の7月の会議では、クロマグロの小型魚の増枠について「米国やメキシコから強い懸念」が出ていました。また増枠に当たっては0歳魚(2キロ未満)の漁獲が増えないよう努力する」規定が設けられています。

 実は「0歳魚」を米国・メキシコは漁獲していません。これは実質的に日本に向けた規定なのです。

 親になる前の魚を獲ってしまったら、産卵する機会が奪われてしまいます。また、同じ数量の漁獲枠であってもサイズが小さければ、漁獲される尾数はそれだけ多くなり資源に悪影響を及ぼします。

 持続可能な開発目標(SDGs)14(海の豊かさを守ろう)にもありますが、水産資源は、産卵できる親の資源量「産卵親魚」を減らさないようするやり方が世界の常識です。その年の水温などの環境要因で資源が増減することはもちろんあります。しかしながら、乱獲を避け、親の資源量をいかにサステナブルにしていくかがポイントなのです。

 社会がクロマグロについて、何がどうなっているのか、どうすればよいのかを正しく理解して行動するためにも、大西洋クロマグロの資源回復の例から学びたいところです。

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