2024年10月15日(火)

Wedge REPORT

2024年10月15日

森林を回復させながら進める林業

 これまで日本が木質ペレットを輸入する国にはカナダが目立った。だが、その木質ペレットは天然林を伐採した木で製造されていると指摘され批判の声が高まっている。ただ輸入量としてはベトナムがもっとも多い。

 23年で260万トンに達する。では、その原料は何か。筆者は、やはりベトナムも天然林を伐採しているのではないか……と疑っていた。

 ところが調査報告から意外な事実を知ることになる。

 まずベトナムの森林率は、1940年代に40%以上あったが、戦争で米軍が枯葉剤を散布したことや、戦後復興で建築材料を得るため伐採を進めたこと、そして農地転換などにより90年には27%に低下していた。しかし92年に林業省が森林再生計画を発表して500万ヘクタールの植林を進めた結果、2022年の森林率は約42%まで回復している。

 また天然林や防災上重要な山頂周辺は伐採禁止にされていた。森林は急回復していたのである。

 主な植林樹種は、北部ではユーカリ類、南部ではアカシア類、山岳地帯ではマツ類とされていたが、近年は政府がアカシア・ハイブリッドに力を入れている。これは非常に成長の早い交配種で、なかには10年で直径20センチ以上に育つものもあるという。この樹種の植林は、東南アジアの熱帯雨林の伐採跡地ではよく見られるが、ユーカリも含めてベトナムから見たら外来種だ。

植えられたアカシアはハイブリッド

 それでも人工林から原料を得ているのなら森林破壊的ではない。育成林業が成り立っていることになる。そう思ってホッとしたのだが、実は次の驚きが待っていた。

短い栽培サイクル

 伐期、つまり植えてから収穫(伐採)までの期間が、なんと3~6年だというのだ。とくに木質ペレット原料となる材は3年くらいで収穫する。いくら成長の早い樹種でも、太さは直径10センチに届かないだろう。

 農家はさらに栽培サイクルを短くする傾向にある。収益を早く得たいからだが、もう一つの理由はリスクを抑えるためという。

 高密度に植えて細いまま背丈を高く伸ばすアカシアやユーカリは、強風が吹くと倒れやすい。山間部では野焼きも多くて、山火事に遇う恐れも増す。そこで育てる期間を短くしてリスク回避したい思いがある。

 アカシアの木は、太くなるまで育てれば硬くなり家具や建築材にも使えるが、細いものは製紙チップや木質ペレットの原料用だ。木材を砕いて小片にするから太さのほか曲がりや傷を気にしないで済む。それに伐採や搬出も楽である。


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