また、「隣接3県」からの人口流入も必ずしも悪いことではない。東京都と隣接3県そして茨城県は数十年にわたって交通ネットワークの整備に努めて来て、有機的な連携を強め役割分担を進めてきた。地方創生を実現するには、総花的政策ではなく、地方でもそれぞれの大都市と地方の連携を強めるなど広域的なインフラ整備を進め機能連携を進めるべきである。そいう考え方の元に、東京にある機能のうち、地方に移転させるべき機能を積極的に移転させる必要がある。
各都市に必要な「展都」という取り組み
国が1987年に策定した第四次全国総合開発計画を受けて、88年に多極分散型国土形成促進法が制定された。国の首都圏基本計画は、東京都区部以外の中核的都市を重点的に整備し、首都圏全体をバランスの取れた大都市圏とすることとした。
そして「町田・相模原」「横浜」「川崎」「厚木」「熊谷・深谷」「埼玉中枢都市圏」「川越」「春日部・越谷」「土浦・つくば・牛久」「成田・千葉ニュータウン」「千葉」「木更津」などを、従来東京が担っていた諸機能の受け皿となる「業務核都市」に指定。今日、東京大都市圏とされている地域の中で中心的な役割を果たすことができるように育成させた。
この時期、国が定めた業務核都市構想に対して東京都は積極的に対応し、国および隣接各県等と連携して、国の行政機関等(地方支分部局)の移転再配置などを図り東京圏の地域構造を従来の区部中心部への一極依存構造から、複数の核と自立した都市圏からなる多核多圏域型へと再編する「展都」を進めた。都が95年に策定した「とうきょうプラン95」や97年に策定した「生活都市東京構想97」は、「展都」には広域的交通ネットワークの整備が中心であるとして、圏央道・つくばエクスプレス(TX)・京浜急行電鉄の連続立体化・上野東京ラインなどの整備を積極的に推進した。
今日、圏央道は埼玉・千葉・神奈川・茨城など各県の業務核都市等を結び、TXは埼玉・千葉・茨城の各都市を、上野東京ラインは埼玉・神奈川の各都市間を結ぶなどして東京大都市圏の機能連携の基盤を形成し、各都市の役割分担を支えている。今後、リニア中央新幹線が完成すると品川から橋本まで10分以内、品川から甲府まで20分内外で移動できるので「展都」はさらに進展する。
埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県の知事、横浜市・川崎市・千葉市・さいたま市・相模原市の市長により構成される九都県市首脳会議は一貫してこの「展都」を推進してきた。一方、大阪圏、名古屋圏では業務核都市構想に対応する動きはなかった。
地方創生といっても各地方都市が同じような機能をもつわけではない。各地方都市がそれぞれに特色ある発展をし、それぞれが互いに役割分担し、連携していくことが大切である。